イヤホン・ヘッドホンの日本ブランドfainalから、fainalブランドとしては初となる完全ワイヤレスイヤホンZE3000がリリースされました。
同社はこれまで、ワイヤレス製品は「ag」というオーディオブランドで提供しており、「ag」製品の開発や生産は様々な会社との共同という形で行われています。
いっぽう、今回リリースされたZE3000はその開発の全工程をfinalが一貫して行った製品で、有線イヤホンと同等の自然な音づくりを行ったとされています。
目指した音づくりがマーケットにどこまで評価されるか試すためか、はたまた開発費を音づくりに全て使い切ったからなのか分かりませんが、機能面はいたってシンプル。
コーデックがaptX™ Adaptiveに対応していること以外は、アクティブノイズキャンセリングや外音取り込みなど、余計な機能は全て省いた硬派な仕様になっています。

今回は、finalが気合を入れて開発したZE3000についてその音質を確認しつつ、このブログのテーマでもある通話品質についてもしっかりとチェックしていきます。
Contents
final ZE3000の通話品質と音質
まずはfinal ZE3000の通話品質と音質を確認していきましょう。
final ZE3000の通話品質
final ZE3000は音質にこだわって開発された完全ワイヤレスイヤホンなので、通話品質については特に新しい機能が搭載されているわけではありません。
それでも今回この製品を取り上げたのは、finalブランド初の完全ワイヤレスイヤホンなので、ちょっと興味があったから。
メーカーのホームページでは、通話品質向上の取組については全く触れられていませんが、どの程度の実力なのか確認していきましょう。
マイクテストは夕方のカフェ、着席率6割程度で店内は比較的ゆったりとしており、軽くBGMが流れている状態でした。
【final ZE3000 通話品質】
テストの結果、予想していたよりも通話品質は悪くないというのが第一印象です。
ZE3000のマイクには、ビームフォーミングやノイズリダクションが搭載されているという説明が一切ありませんから、もっと通話品質は悪いだろうと想像していました。
周囲の人の声やBGMを拾ってしまってはいますが、注目したいのは録音された音声自体はかなり自然に聞こえることと、周辺ノイズが変に増幅されて聞こえる感じがないこと。
最近、通話品質を高めようとするあまり、音声や周辺ノイズにエコーがかかったように聞こえる製品が増えてきていると感じていますが、ZE3000にはそのような傾向がみられません。
もちろん出勤率の高いオフィスの自席やカフェからZE3000でリモートミーティングに参加するのはちょっと厳しいですが、自室や会議室でならビジネスにも十分使えます。
また、発言の機会がそう多くないのであれば、オフィスの自席で使ってもミーティング参加者に不快な思いをさせることはないと思います。
final ZE3000の音質
final ZE3000を選ぶ最も大きなメリットは。音質と言っても過言ではないでしょう。
低音~高音まで全音域にわたって意図的に強調されたようなところがなく、素直でさわやかなサウンドではあるものの、音の持つ力というか存在感をはっきりと感じることができる音質です。
とくに中音~高音の爽快感が際立っており、細かな音の違いや余韻を十分に楽しむことができるイヤホンだと感じます。
final ZE3000は超低歪を実現する「f-Core for Wireless」というドライバーと、イヤホン筐体内部の圧力を最適化する「f-LINK ダンピング機構」が搭載されています。

いずれも高音質を追求するために新たに開発・設計されたもので、その音質からこれらの技術が確実に効果を発揮していると実感することができます。
音場は縦より横へ大きく広がっている印象で、爽快感のある音質と相まって開放的なサウンドを楽しむことができるのもこのイヤホンの特長ではないかと思います。
なお、イヤホンと耳との密着度がそれほど高い製品ではなく、低音域の量感を損なわないためには、しっかりフィットしたイヤーピースを選ぶことが重要なファクターとなります。

ZE3000には、イヤホン本体のカラーに合わせたfinal TYPE E 完全ワイヤレス専用使用イヤーピースが、SS/S/M/L/LLの5サイズ同梱されています。
S/M/Lを試してみて、その中間サイズがあればと感じる場合には、MS/MLサイズが用意されているJVC Spiral Dotシリーズなどがおススメです。
final ZE3000の外観と装着感
final ZE3000の外観と装着感をチェックしていきましょう。
final ZE3000の本体と充電ケース
final ZE3000の充電ケースは、横幅が手の平におさまるギリギリのサイズですが、平べったい形をしているのでそれほど大きさを感じさせることはありません。

手に馴染みやすい形状にこだわったというだけあって、手の平に乗せると握りやすく、何というかしっくりくるなという感じがしますね。
材質はプラスチックですが、シボ塗装といわれる細かい凹凸模様の付いたデザインが施されていることから、高級感のある外観になっています。

本体はワイヤレスイヤホンとしては独創的な流線形のデザインになっていて、同社の有線イヤホンAシリーズのような感じがしますね。
ワンポイントでプリントされたfinalのロゴがCool Japanっぽさを演出しているような雰囲気があり、なんとなく和のテイストを感じるのは筆者だけでしょうか。
イヤホン本体にも充電ケースと同じシボ塗装が施されているので、指でつまんだ時に滑りにくくなっています。
直線的なデザインの為かぱっと見では大きく思えるのですが、finalのロゴがプリントされた面は斜めにカットされているので、実際手にしてみるとかなりコンパクトです。
カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色で、ブラックはイヤホン本体のfinalのロゴが浮き出て見えますが、ホワイトは逆にあまり目立たないデザインになっています。

そういった意味ではブラックは存在感があり、ホワイトはさりげなく使えるようなデザインになっていると感じます。
final ZE3000の装着感
final ZE3000は耳への圧迫感が少なく、安定度の高い完全ワイヤレスイヤホンです。

イヤホン本体の裏面が耳に密着するタイプの完全ワイヤレスイヤホンでは、密閉感は高まるものの、どうしても圧迫感を感じることになります。
その圧迫された状態が長く続くことにより、人によっては耳に痛みや疲労を感じるのですが、ZE3000はそれを避けるために耳との接触面積を減らす工夫が取り入れられているのです。

上の図の通りZE3000は、耳ポケットはイヤホン本体のいずれか1点、外耳道はイヤーピースの1点、加えて耳珠1点の計3点でイヤホンを支える構造となっています。
このため非常に軽い装着感である反面、イヤホン本体でのPNC(パッシブノイズキャンセリング)効果が低いので、イヤーピースのサイズ選びが重要となるのです。
音質のところでも触れましたが、しっかりとフィットするイヤーピースを選ばないと低音の量感や遮音性に不満を感じる結果につながりますので注意が必要です。
final ZE3000の機能
final ZE3000の機能面についてチェックしていきましょう。
final ZE3000の操作
final ZE3000は、イヤホン本体のタッチセンサーでコンテンツや通話を操作できるようになっています。
操作方法は以下の表の通りで、専用アプリが用意されていないのでタッチセンサーのカスタマイズはできません。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回タップ | 音楽再生/停止 | |
| 2回タップ | 音量を下げる | 音量を上げる | |
| 長押し | 前の曲に戻る | 次の曲にスキップ | |
| 通話 | 1回タップ | 電話を受ける | |
| 2回タップ | 着信拒否 | ||
| 長押し | 電話を切る | ||
| 通常時 | 3回タップ | 音声アシスタント起動(音楽停止状態のみ) | |
最初見た時にfinalロゴがプリントされているところがタッチセンサーだと思ったんですが、ZE3000のタッチポイントはイヤホン本体先端部になっています。
タッチセンサータイプの完全ワイヤレスイヤホンは、イヤホンの着脱時に意図せずセンサーを触ってしまい誤作動するのが最大のデメリット。
しかし、final ZE3000はタッチポイントが着脱時に触れにくい箇所になるよう設計されているので、誤作動を気にすることなく扱うことができます。

実際に使ってみると、イヤホン着脱時に特に気にしなくてもタッチポイント部分は触らずに扱えましたので、これはなかなか考えられているなと思いました。
final ZE3000の機能
final ZE3000のおススメ機能について確認していきましょう。
「おっ⁉」と目を惹く新機能を搭載しているわけではありませんが、完全ワイヤレスイヤホンをスマートに使うための基本機能は備わっています。
aptX™ Adaptiveに対応
final ZE3000はSBCやAACに加えて、途切れにくく高音質なaptX™や高音質・低遅延コーデックのaptX™ Adaptiveに対応しています。
| コーデック | 音質と特長 | 遅延 | ビットレート |
|---|---|---|---|
| SBC | Bluetoothを搭載した機器は必ず対応している。SBCの音質を★と仮置きして他のコーデックと比較してみます。 | 0.22秒前後 | 64kbps~328kbps |
| AAC | 音質は★★。iPhoneやiPadのコーデックはAACが優先され、AACが使えない場合はSBCで接続される。 | 0.12秒前後 | 128kbps 256kbps(可変) |
| aptX™ | 音質は★★。米Qualbommが開発したAndroid端末の標準仕様。AACと体感上の差はない。 | 0.07秒前後 | 352kbps@44.1kHz 384kbps@48kHz |
| aptX™ Adaptive | 音質は★★★。接続環境やアプリに応じてビットレートを自動で変化させるコーデック。今後主流になる可能性大。 | 0.05秒 ~0.08秒程度 | 276kbps~420kbps |
ZE3000の対応コーデックは上の表の通りですが、aptX™ Adaptiveに対応しているデバイスと接続すれば、より高音質・低遅延でコンテンツを楽しむことが可能です。
オートペアリング機能
final ZE3000にはオートペアリング機能が搭載されていて、充電ケースのふたを開けるだけでデバイスとのペアリングが開始されます。
イヤホンを取り出さないとペアリングが開始されない機種も多くありますが、リモートミーティングにギリギリ参加という時などにもたつきを感じるものです。
そういった意味では、ふたを開けただけでペアリングが開始されるというのは、使い勝手としては非常にありがたい仕様だと思います。
片耳モード
final ZE3000は片耳だけでの使用もできますが、片耳使用の際は自動的にステレオ再生からモノラル再生に切り替わります。
モノラル再生とは、左右のイヤホンそれぞれに流れている音が片側のイヤホンから再生される方式のこと。
ZE3000はこのモノラルモードを搭載しているため、両耳をふさぎたくないシチュエーションでイヤホンを使っても、違和感なくコンテンツを楽しむことができます。
IPX4の防水性能
final ZE3000はIPX4の防水性能となっています。
IPは防塵・防水等級の国際規格で、前の数字が防塵性能、後ろの数字が防水性能を表していて、防塵等級は0~6の7等級、防水は0~8の9等級があります。

ZE3000の防水等級4は「いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない」レベルで、急な夕立などでイヤホンが濡れても問題ありません。
ちなみに防塵等級はXなので、特別な防塵対策は施されていないということになります。
final ZE3000のレビューまとめ
それでは最後にfinal ZE3000の総合評価と、良い点・改善してほしい点を整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | 😌静かな環境ならビジネスでも使える | 4.1 |
| 低音 | 😃重量感は少なめだが厚みは十分 | 4.2 |
| 中音 | 😄近くクリアに感じる | 4.5 |
| 高音 | 😄音の粒が明瞭で爽快感あり | 4.5 |
| 装着感 | 😌イヤーピース選びは慎重に | 4.0 |
| 機能減点 | 😔アプリは欲しかった | -1.0 |
| 総合評価 | 4.1 | |
✓自然な音質の通話
✓クリアで爽快感のある素直な音質
✓シボ塗装が施された高級感のある外観
✓圧迫感のない装着感
✓aptX™ Adaptiveに対応
✓IPX4の防水性能
✓外音取り込みモード非搭載
✓ワイヤレス充電非対応
✓専用アプリなし(イコライザー、操作カスタマイズなど)
finalブランドとしては初の完全ワイヤレスイヤホンとなるZE3000は、強調された帯域がない自然な音づくりを目指して開発された製品です。
メーカーホームページを見ても、通話品質や豊富な機能ということは一旦横に置き、納得できる音質を実現することを最優先したということがひしひしと伝わってきます。
そんなZE3000を手に取って感じたことは、finalが目指したことは高次元で製品化されているということ。
低音~高音まで細やかな音の表情が感じられるサウンドで、クリアで爽快感のある音質に仕上がっています。
また音場も広く、音が空間に吸い込まれるように消えていく余韻が感じられるなど、没入感の高いことも評価したい点ですね。
通話品質は良い意味で裏切られたというか思った以上に自然な音質で、自宅でのテレワークなど静かな環境かならビジネスにも利用可能なレベルとなっています。
ZE3000には専用アプリが用意されていないので、機能で他の製品より劣るという面はありますが、それを差し引いても高音質だというメリットが勝るように感じます。
final ZE3000は「1万円台でとにかく高音質な完全ワイヤレスイヤホンを探している」という方には強くおススメしたい製品ですね。















