Marshallといえばギターアンプで有名なメーカーですが、最近Bluetoothスピーカーのラインナップが充実しています。
「ワイヤレスイヤホンもラインナップが充実しないかな…」なんて思っていたところ、Motif Ⅱ A.N.C.がリリースされたじゃないですか!
これは試してみなければと思っていたところ、今回メーカー様から実機をご提供いただけるとのことになりました。

レビューにあたっては感じたことをそのまま書いて構わないというありがたいお話。
それでは忖度無しで、実際にMotif Ⅱ A.N.C.を使ってみて感じたことをお伝えしていきたいと思います。

【良い点】
〇Marshallブランドを強く感じられるデザイン
〇Marshallシグネチャーサウンドを感じられる音質
〇テレワークにも積極的に使える高い通話品質
〇強力ではないが良質なノイズキャンセリング性能
〇マルチポイントに対応
〇充電ケースもIPX4の防水性能を装備
〇前作から大きく改善されたバッテリー性能
【イマイチな点】
✖タッチコントロールの完全カスタマイズができない
✖イヤーピースは市販品への交換を推奨
Contents
Motif Ⅱ A.N.C.のデザインと装着感
まずはMarshall Motif Ⅱ A.N.C.のデザインや装着感についてチェックしていきましょう。
Marshallらしさにあふれたデザイン
Motif Ⅱ A.N.C.は、Marshallのブランドイメージ通りでありながら少しばかり遊び心が加わったデザインになっています。
まず充電ケースですが、見た瞬間に「やっぱりMarshallってこれだよなー」とテンションが上がりましたね。

シボ加工されたブラックの充電ケースと白のMarshallロゴは、まさしくギターアンプのイメージそのもの。
すくなくともギターを触ったことがある方なら、この外観だけで心が惹かれること間違いなしでしょう。
手のひらにすっぽり収まるサイズ感で、シャツの胸ポケットに入れても邪魔にならないのは嬉しいですね。
イヤホン本体はスティックタイプで、スティック部分は比較的短い印象。

フェイスプレートのMarshallロゴ、スティック部分のローレット加工や先端のゴールドが良いアクセントになっています。
ちなみにスティック部分のデザインは、Marshallワイヤレススピーカーの電源スイッチの形状と同じ。
このあたりの遊び心というかデザインの統一感については、老舗ブランドならではの心意気が感じられますよね。
また、同梱されているUSBケーブルにもMarshallロゴが刻印されてあり、ちょっとした特別感があります。

Motif Ⅱ A.N.C.のカラーバリエーションはブラックのみですが、個人的にはMarshallなのでこの色1択だなと納得です。
イヤーピースの交換を推奨
Motif Ⅱ A.N.C.はスティックタイプらしい軽い着け心地で、耳が圧迫されて痛みを感じるようなことはなさそうです。
このレビューを作成するにあたって約12時間着けっぱなしで使ってみましたが、自分は耳が痛くなることはありませんでした。
付属のイヤーピースはかなり傘が低く薄いシリコン製なので、装着感が軽さに一役買っているのでしょう。
ただし、Motif Ⅱ A.N.C.の付属イヤーピースは、個人的に遮音性がいま一つだと感じました。
遮音性に難があると低音の厚みやノイズキャンセリング性能が損なわれてしまいます。
素材が悪いというわけではありませんが、傘が低くて薄いという性格上どうしても遮音性が犠牲になるんですよね。

同梱されているイヤーピースを並べてみましたが、やはり傘が低いことがお分かり頂けると思います。
ただし、Motif Ⅱ A.N.C.のノズル部分は通常の形状なのでどんなイヤーピースでも装着できそう。
そこで市販のイヤーピースをあれこれ試してみたんですが、多くの製品は充電ケースと干渉してNGという結果に。
イヤホンには装着できるんですが、格納するとイヤホンが浮いて充電されない状態になってしまいます。
充電ケースと干渉せずにしっかり格納できて、これならと思えたイヤーピースは以下の3種類。
低音が豊かになりノイズキャンセリング性能も改善されるので、よろしければ試してみてください。
Final TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様
非常にリーズナブルで使いやすいイヤーピースで、はじめての市販イヤーピースならこれという製品。
AZLA SednaEarfit Crystal for TWS
プレミアムリキッドシリコンラバーを採用し、パンチ力のある真の重低音を表現できるように設計された製品。
audio-technica AT-ER500
体温に応じて耳穴の形に合わせて変形するアブソートマーを採用し、明瞭な高域、締まりのある低域を表現。
Motif Ⅱ A.N.C.の音質と通話品質
Marshall Motif Ⅱ A.N.C.の音質と通話品質について確認していきましょう。
Marshallサウンドをイヤホンで表現
Motif Ⅱ A.N.C.は、その小さな筐体からは想像もつかないほどのパワフルなサウンドを楽しませてくれます。
パワフルといっても低音だけがドンドン鳴り響くという意味ではありません。
もちろんウォームでアタック感のある低音は本機の持ち味ですが、全音域で音の粒が濃い=パワフルと感じました。
また中高音の透明度や解像度も高く、音場も広めで上方向への抜けの良さも感じられます。
ついついボリュームを上げたくなるような、そんな気分にさせてくれるサウンドだという印象。
しかも、いつもよりボリュームを上げてもうるさく感じないんですよねぇ。
ボーカルをはじめとしてそれぞれの楽器の音は個別に存在感があるのに、全体として融和している。
アーティストの聴かせたい音が明確に伝わってくるという感じでしょうか。
Marshallのシグネチャーサウンドってこういうことか!と妙に納得してしまいました。
どんな音楽にも合うとは思いますが、やはりロックが一番相性が良いでしょう。
とくにMotif Ⅱ A.N.C.の弦楽器の表現力には注目して頂きたいと思います。

なお、ノイキャンONとOFFとでそれほど大きな音質の変化が無いのもMOTIF Ⅱ A.N.C.の大きなメリットでしょう。
ノイキャンONで高音の抜けが若干抑制されるように思いますが、気になるほどではありません。
また、専用アプリ「Marshall Bluetooth」にはイコライザーが用意されています。
6種類のプリセットに加え完全カスタマイズも可能で、チューニングによる音質変化は比較的大きな印象。

デフォルトのMARSHALLが絶妙なチューニングで、各帯域とも大きく動かしすぎるとバランスがとりにくい印象。
カスタマイズするなら調整幅の半分くらいのエリアでチューニングすれば、全体のバランスが破たんしないように思いました。
ビジネスにも使用可能なマイク性能
Motif Ⅱ A.N.C.はビジネスシーンでも使えるだけのマイク性能だと感じました。
前作のMotif A.N.C.はお世辞にもビジネスで使用できるレベルには達していなかったので、これは大きな進化ですね。
今回は実際に自宅とカフェの2つのシチュエーションでMotif Ⅱ A.N.C.のマイクテストを実施してみました。
【Motif Ⅱ A.N.C. 自宅でのマイクテスト】
まず自宅でのテスト結果ですが、全く問題なく通話できるレベルのマイク性能だということがお分かり頂けるかと思います。
若干エコーがかったようなところはありますが、この程度なら気にするほどのものではないでしょう。
【Motif Ⅱ A.N.C. カフェでのマイクテスト】
つぎにカフェでのテストですが、自分が声を発した瞬間に周囲のノイズを抑制しているのが確認できます。
ノイズを抑制する能力は非常に高いと思いますが、自分の声にもザラつきが感じられるのが少々残念。
ただし、ゆっくりはっきりと発音すれば相手が聞き取りにくいということはないでしょう。
2023年も色々なイヤホンを試してきましたが、Motif Ⅱ A.N.C.の通話品質はかなり高いと評価できます。

Motif Ⅱ A.N.C.はデュアルマイクビームフォーミングと AIベースのノイズリダクション機能が搭載されているとのこと。
今回のマイクテストから、それらが十分に機能していることを確認することができました。
Motif Ⅱ A.N.C.のノイキャンと外音取り込み性能
Marshall Motif Ⅱ A.N.C.のノイズキャンセリング性能と外音取り込み性能についてチェックしていきましょう。
マイルドなノイズキャンセリング性能
Motif Ⅱ A.N.C.のノイズキャンセリングはマイルドな性能で、強力なノイキャン機ではないという印象です。
低域ノイズはしっかりカットしてくれますが、人の話し声などの中高域ノイズはかなり残ってしまいますね。
したがって、混んでいるカフェや窓のあいている電車内などで使う場合は、少し音量を上げる必要があります。
いっぽうでANCをONにしても鼓膜が圧迫される感覚があまりなく、あまり強いノイキャンは苦手という方にはおススメですね。
また、ANC ONでもホワイトノイズがほぼ感じられないので、これもMotif Ⅱ A.N.C.の大きなメリットだと感じました。
なお、アプリでノイキャン強度を3段階に切り替えることができますが、このノイキャン性能なら最大固定で良いと思います。

また、市販のイヤーピースに変えると遮音性が大きく上がるので、ノイキャンが弱いと感じた場合はイヤピの変更を検討してみましょう。
ただし、Motif Ⅱ A.N.C.は充電ケースに干渉しないイヤーピースが限られるので、こちらを参考にしてくださいね。
独特な外音取り込みモード
Motif Ⅱ A.N.C.の外音取り込みモードは、これまで試してきたワイヤレスイヤホンとは違った印象を受けました。
どこが違うのかというと、音源までの距離感。
個人的な感覚として外音取り込みモードは音を透過させるイメージで、音源の位置がリアルに近い印象です。
しかし、Motif Ⅱ A.N.C.の外音取り込みは集音してイヤホンから流している感覚が強いんですよね。
したがって音源までの距離感がなく、イヤホンを使ってテレビでも見ているような感じがします。
聴こえてくる音は非常に高音質なので慣れればどうということはないのでしょうが、最初は違和感を感じると思います。
なお、外音取り込みレベルは低・中・高の3段階で調整可能。

高を選択すると音源との距離感がほとんどなくなるので、個人的には低がもっとも自然だと感じました。
Motif Ⅱ A.N.C.の機能
Marshall Motif Ⅱ A.N.C.の便利な機能についてチェックしていきましょう。
シンプルで使いやすい専用アプリ
Motif Ⅱ A.N.C.は専用アプリ「Marshall Bluetooth」に対応しています。
機能満載というわけではありませんが、以下の通り基本的なことはできるようになっています。
✓イヤホン本体とケースのバッテリ残量確認
✓ノイズコントロールの切替え
✓イコライザーでのチューニング
✓タッチコントロールのカスタマイズ
✓操作音のON/OFF切替え
✓自動再生/停止のON/OFF切替え
✓バッテリー保護機能(3段階切替え)
タッチコントロールのカスタマイズについて
Motif Ⅱ A.N.C.はイヤホン本体のタッチコントロールで操作ができるようになっています。
デフォルトの操作設定は以下の表の通りで、左右で異なる操作の振り分けができないのは少々残念に感じます。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回押し | 再生/停止 | |
| 2回押し | 曲送り | ||
| 3回押し | 曲戻し | ||
| 1回+長押し | Spotify Tap | ||
| 長押し | カスタムアクション | ||
| 通話 | 2回押し | 電話を受ける/切る | |
| 長押し | 着信拒否 | ||
また、操作の完全カスタマイズは標準・ミニ・オフの3パターンからの選択制となっていて、ここも少々残念ですね。

ただし、長押しのカスタムアクションだけは左右それぞれ個別に操作を割り振ることができるんですが、ここで悩みが…。
カスタムアクションにはノイズコントロール、イコライザー、音量、音声アシスタント、何もしないを選択することが可能。
この中で個人的に使う頻度が高いのがノイズコントロールと音量なんですが、音量は「上げる」と「下げる」がありますよね。
つまり、音量の上下を左右に割り振るとノイズコントロールが使えないんです。
ノイズコントロールを左右どちらかに割り振ると、今度は音量の上下片方しか割り振れません。
結局音量はスマホで調整することにして、左右両方ともノイズコントロールを割り当てました。
2回押しや3回押しも左右それぞれカスタマイズできれば、MOTIF Ⅱ A.N.C.の操作性は大きく向上します。
この点については、ファームウェアのアップデートで改善をお願いしたいですね。
マルチポイントに対応
Motif Ⅱ A.N.C.は2台のデバイスに同時接続可能なマルチポイントに対応しています。

このマルチポイントは本当に便利な機能で、一度使ったら元には戻れないほど。
たとえばプライベートのスマホとビジネス用のスマホに同時接続しているケースを想定してみましょう。
通勤電車内でプライべートスマホで音楽を聴いている時に、ビジネス用スマホに着信があったとします。
この際、Motif Ⅱ A.N.C.本体のフェイスプレートを2回タッチすれば、着信応答して通話に切り替わります。
つまり、優先される接続先がプライベートスマホからビジネス用スマホへ自動で切り替わり、音楽は一旦停止するんですね。
通話が終了すると自動的にプライベートスマホの接続に切り替わり、止まっていた音楽が流れ出します。
このように通話やコンテンツの使用状況に応じて、優先するデバイスとの接続に自動的に切り替えてくれるのがマルチポイントです。
なお、同時接続するデバイスはBluetooth接続ができるのであればどのような組み合わせでもOK。
パソコンとタブレット、ゲーム機とスマホなどデバイスの利用シーンに応じてマルチポイントを使いこなしましょう。
充電ケースに防水性能を装備
Motif Ⅱ A.N.C.はイヤホン本体がIPX5、充電ケースにもIPX4という防水性能が装備されています。
充電ケースに防水性能が装備されているイヤホンは珍しく、Motif Ⅱ A.N.C.の大きなメリットだといえるでしょう。
ちなみにIPX5とIPX4という防水性能がどの程度のものかは以下の通り。
| 等級 | IPコード | 保護の程度 | テスト方法 |
|---|---|---|---|
| 4 | IPX4 | いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない | 300~500mmの高さより全方向に10ℓ/分の放水、10分 |
| 5 | IPX5 | いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない | 3mの距離から全方向に12.5ℓ/分、30Kpaの噴流水を3分間 |
つまり、イヤホン本体は軽く水洗いする程度、充電ケースは多少雨に濡れても大丈夫という防水性能ですね。
ワイヤレスイヤホンは雨模様の日でも使いたいですし、机の上に置いておいたら飲み物をこぼしたなんてことも…。
ワイヤレスイヤホンって実際に使うとなると、水に濡れないように結構気を遣う必要があるんですよね。
その点Motif Ⅱ A.N.C.の防水性能なら、あまりナーバスにならずに日常生活で使用することができます。
大幅に改善されたバッテリー性能
Motif Ⅱ A.N.C.の機能面を語るうえで注目したいのが、前作から大幅に改善されたバッテリー性能でしょう。
以下の表はMotif Ⅱ A.N.C.と前作のMotif A.N.C.のバッテリー性能を比較したものです。
| 項目 | MOTIF Ⅱ A.N.C. | MOTIF A.N.C. | |
|---|---|---|---|
| 連続再生時間 | イヤホン本体(ANC ON/OFF) | 約6時間/約9時間 | 約4.5時間/約6時間 |
| 充電ケース込み(ANC ON/OFF) | 約30時間/約43時間 | 約20時間/約26時間 | |
| 充電時間 | イヤホン本体 | 約1.5時間 | 約3時間 |
| 充電ケース | 約1.5時間 | 約3時間 | |
これをみるとMotif Ⅱ A.N.C.は再生能力が約1.5倍、充電能力が約2倍程度にスペックアップしていることがわかります。
前作はバッテリー性能にやや難ありと言わざるを得なかったんですが、その弱点をしっかり改善してきたのはさすがです。
もちろん急速充電(15分の充電で約1時間の再生可能)やワイヤレスチャージも装備。

バッテリーに関しては残念な点が見あたらないのも、Motif Ⅱ A.N.C.を選ぶポイントだといえるでしょう。
Motif Ⅱ A.N.C.のレビューまとめ
それでは最後にMarshall Motif Ⅱ A.N.C.の総合評価と実際に使ってみて感じたことを纏めていきましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | オフィスなどでビジネスにも使用可能 | 4.6 |
| 低音 | ウォーム系の迫力ある低音 | 5.0 |
| 中音 | 分離感が良く心地よい響き | 5.0 |
| 高音 | 繊細さと大胆さを併せ持つ印象 | 4.7 |
| ANC性能 | マイルドだがサウンドを邪魔しないANC | 4.5 |
| 外音取込み | 音質は良いが音源との距離感が測れない | 4.6 |
| アプリ機能 | シンプルだが使いやすいデザイン | 4.7 |
| 機能加点 | マルチポイントに対応 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.8 | |
Marshall Motif Ⅱ A.N.Cを実際に使ったうえで感じたことを一言で表現すると「カッコいい!」につきます。
まずはそのデザインで、ギターを触ったことのある方なら見ただけでテンションが上がるのではないでしょうか。

そしてMarshallのシグネチャーサウンドを高いクオリティで再現している音質。
ついボリュームを上げてしまうようなサウンドで、それぞれの音が主張しつつも融合しています。
アーティストが聴かせたいサウンドがしっかり表現されている印象で、それゆえ聴いていてカッコいい!と思ってしまうんでしょう。
デュアルマイクビームフォーミングと AIベースのノイズリダクション機能により、通話品質も大きく向上。
ビジネスシーンでも安心して使えるマイク性能が装備されたのは非常に大きなメリットに感じました。
このほか、マルチポイントや充電ケースへの防水機能の装備、バッテリー性能の向上など全体的なスペックも必要十分でしょう。
ノイズキャンセリング性能は強力とは言えないものの、音質変化は少なくホワイトノイズも感じない上質な出来。
ノイキャンの強いイヤホンが欲しい方は別モデルを検討すべきでしょう。
しかし聴いてしまったが最後、Motif Ⅱ A.N.C.のサウンドは捨てがたいと感じるはず。
唯一改善して欲しいところはタッチコントロールのカスタマイズくらいですかね。
2023年の締めくくりに、忖度無しで良いイヤホンに巡り合えたなと嬉しい気持ちになりました。














