低価格帯のイヤホンをご紹介するのに、これまでどうしても機能面が充実したモデルに目が行きがちでした。
1万円以下でもノイキャンはもちろんのこと、マルチポイントまで搭載されたモデルが増えてきていますしね。
ただ1万円以下で機能が充実しているイヤホンは、音質がイマイチというものが多い印象です。
低価格イヤホンだとかけられるコストが限られているので、機能も音質もというわけにはいかないのでしょう。
そこで、今後は音質重視の低価格モデルも積極的にご紹介すべきではないかと考えた次第です。
今回はその第一弾として、ビクターのエントリーモデルHA-A20Tをご紹介します。
5,000円台でもしっかりとビクターサウンドが表現されたモデルで、やはり老舗ブランドだけのことはあります。
実際に使ってみた印象をイマイチな点も含めてレビューしますので、是非参考にして頂ければと思います。

【良い点】
〇ビクターらしい暖かみのある音質
〇中高音の音質レベルは上位機種に匹敵
〇テ3種類のサウンドモードの切替が可能
〇遮音性が高く街中でも十分使用可能
〇曲線をメインとした柔らかなデザイン
〇くすみカラーを取り入れたカラーバリエーション
【イマイチな点】
✖マイク性能(周辺ノイズはほぼスルー)
Contents
Victor HA-A20Tのデザインと装着感
Victor HA-A20Tのデザインと装着感についてチェックしていきましょう。
柔らかなデザインとくすみカラーが特長
HA-A20Tはコロンとした丸みを帯びたデザインと、柔らかなくすみカラーが特長的なワイヤレスイヤホンです。
まず充電ケースですが、楕円形の手に馴染みやすいかわいらしい形をしています。

上蓋にはビクターのシンボルともいえるニッパーがプリントされており、音楽好きなことをさりげなく主張できますね。
イヤホン本体は非常にコンパクトで、スティック部も短くて取り回しがしやすくなっています。

スティック部が長いと冬場はマフラーに引っ掛けたりして落下することも。
その点、HA-A20Tはそうしたことが起こりにくいデザインになっています。
またHA-A20Tの大きな特長として、ブラックとホワイト以外にくすみカラーのパープルとグリーンが用意されていること。

普段のファッションにも合わせたカラーを選びたいという方にとっては、この2色は嬉しい設定なのではないかと思います。
装着安定性・遮音性ともに非常に高い
ビクター HA-A20Tは、装着したときの安定感、そして遮音性ともにかなり高いイヤホンだと感じました。
スティックタイプのイヤホンは、通常はスティック部分が耳にあたってあまり耳孔の奥までイヤーピースが入りません。
そのため着け心地が軽いんですが、その反面耳栓効果があまり高くないので遮音性が犠牲になります。
しかしHA-A20Tはスティック部分が非常に短いため、スティックのないタイプのイヤホンと同じような装着感。

つまり耳孔の奥までしっかりとイヤーピースを差し込むことができ、それゆえ遮音性が非常に高くなっています。
HA-A20Tを装着して最初に感じたことは「これならノイキャン非搭載でも問題ないかも」です。
地下鉄や飛行機の中ではさすがに厳しいと思いますが、街中や空いているカフェならストレスなく音楽を楽しめるでしょう。
Victor HA-A20Tの音質と通話品質
Victor HA-A20Tの音質やマイク性能についてチェックしていきましょう。
暖かみのあるビクターサウンド
HA-A20Tはビクターらしい暖かみのあるサウンドで、さすがは老舗ブランドだと思える音質です。
まず低音ですが、しっかりと厚みが感じられ、ゆったりとした落ち着いた音質です。
エントリーモデルなので「タイトさ」、「レスポンスの良さ」といったところの不足感はあります。
ただこの低音が、全体的に暖かみのある音質に感じられる土台をつくっていることは間違いないでしょう。
中高音はフラットで、解像度も高く低音に埋もれるようなこともありません。
ボーカルの距離感も近すぎず遠すぎずちょうど良い塩梅で、高音も刺さりを感じるようなところはないですね。

音質だけで評価するなら、中華系の同価格帯モデルとは比較にならないほど完成度は高いと思います。
やはりこのあたりは、ビクタースタジオやサウンドマスターを擁するメーカーならではの音へのこだわりを感じます。
なお、HA-A20Tはイヤホン操作で3種類(NORMAL,CLEAR,BASS)のサウンドモードを楽しむことが可能。
CLEARはベースやドラムなどの低音が弱くなるというよりは、遠くなって音が弱くなるようなイメージ。
逆にBASSはベースやドラムなどの低音が前に出て、中高音との距離が開く感じがします。
個人的にはNORMALが各音域との距離感が等しく、最も気持ち良くリスニングできる印象を受けました。
なお低音好きの方には、HA-A20Tをベースに重低音寄りにチューニングしたJVC HA-XC62Tをおすすめします。
静かな環境下ならビジネスにも使用可能
HA-A20Tのマイク性能は、同程度の価格帯の他機と比べると若干低いと感じました。
マイクの音声そのものは良好なんですが、周辺ノイズの抑制がほとんど見込めないというのが気になります。
以下のマイクテストはBGMが流れるカフェで実施したものですので、まずは結果をご確認ください。
【Victor HA-A20T マイクテスト】
自分が発声していない時に、BGMをほぼスルーしているのがお分かり頂けると思います。
ただ、発声している自分の声はしっかりと明瞭に聴こえるので、自室や会議室など静かな環境下ならビジネスにも使える通話性能でしょう。
自分が発声していない時に周辺ノイズを拾ってしまっているのは、録音データからも明らかです。
以下は同じような価格帯でマイク性能が高いことからご紹介したPHILIPS TAT3508との音声データを比べたものです。

赤丸で囲んだところが自分が発声していない時なんですが、PHILIPS TAT3508はほぼ無音状態。
これに対してビクター HA-A20Tは周辺ノイズを拾っているので、音の波形が出ていることがお分かり頂けると思います。
HA-A20Tに比べてTAT3508は、2024年1月時点の実売価格で2,000円ほど上。
では、この2台で迷った場合どちらを選ぶのがベストか?
自分の場合、ビジネス利用メインならTAT3508、音楽鑑賞メインならHA-A20Tを選ぶでしょう。
TAT3508はマルチポイントを登載し、周辺が騒がしい環境下でもある程度ノイズを抑制した通話が可能ですからね。
今回ご紹介した選択肢は一例ですが、「自分はどう使うのか?」を考えてイヤホン選びをすると失敗しないと思います。
Victor HA-A20Tの機能
ビクター HA-A20Tの機能面について、メリットだと感じる点をご紹介します。
タッチコントロールの操作について
ビクター HA-A20Tは、イヤホン本体のタッチコントロールで操作をすることができるようになっています。
デフォルトの操作は以下の通りで、通話時の操作が少しだけ複雑かなといった印象。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回押し | 再生/停止 | |
| 2回押し | 音量DOWN | 曲送り | |
| 3回押し | 音量UP | 曲戻し | |
| 長押し | 音声アシスタント起動 | サウンドモード切替(NOROMAL ⇒ BASS ⇒ CLEAR) | |
| 着信時 | 1回押し | 電話を受ける | |
| 長押し | 着信拒否 | ||
| 通話中 | 1回押し | マイクミュート/解除 | |
| 長押し | 通話を終了する | ||
| 4回押し | 通話をイヤホンからスマホへ切り替える | ||
イヤホン本体のタッチコントロールは、ニッパーがプリントされているところをタップします。

実際に操作をしてみると、しっかりとタップしないと反応しないことが多々ある印象です。
たとえばスティック部分から指を滑らせてニッパーに触っても反応してくれません。
長押しの場合も軽く触れる感じで長押ししても反応してくれないので、「トンっ」とタップしたまま指を置き続けるイメージが必要です。
誤操作が少ないのでメリットだと整理しても良いのですが、もう少し反応が良くてもいいかなと感じました。
IPX4の防水性能
HA-A20Tのイヤホン本体はIPX4の防水性能を備えています。

ワイヤレスイヤホンは外出時にも装着することが多いので、防水対応しているモデルを選びたいところ。
その点、HA-A20Tは多少の水しぶきがかかっても大丈夫というレベルの防水性能を備えています。
したがって、雨の日でも傘をさしていれば問題ありませんし、急に雨に降られて多少濡れても大丈夫。
濡れてしまった時は乾いたタオルなどで水気をふき取り、十分乾かしてから充電ケースに格納するようにしましょう。
ご注意頂きたいのが、充電ケースは防水対応していないということ。
外出時に急に雨に降られたからといって、雨の中で充電ケースを取り出してイヤホンを格納するのはNGです。
なおランニングなど屋外中心でハードに使いたいという方は、さらに防塵・防水性能の高いモデルを選ぶようにしましょう。
IPはInternational Protectionの略で、電気製品の防塵・防水性能を表すものです。IP68などと表され、IPに続く前の数字が防塵、後ろの数字が防水等級を表します。
必要十分なバッテリー性能
HA-A20Tは音楽鑑賞をメインとするなら、十分なバッテリー性能が備わっていると考えて良いでしょう。
連続音声再生はイヤホン単体で約7時間、充電ケースを合わせると約24時間。
1日3時間程度音楽を聴くとして、1週間に1回充電すればOKと考えれば個人的には許容範囲内です。
2泊3日程度の旅行なら、移動中に比較的長時間音楽を聴いていても帰ってくるまで充電の必要はないでしょう。
なお、通話に使う場合は音楽再生の60~70%程度のバッテリー持ちになるので、通話頻度が高いと充電回数は増えます。
ただHA-A20Tは片側のみでも通話可能ですので、バッテリー消費を抑えるなら片側を交互に使うのがおススメです。
Victor HA-A20Tのレビューまとめ
それでは最後にビクター HA-A20Tの総合評価と今回実際に使ってみて感じたことを整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | 静かな室内ならビジネスにも利用可能 | 4.0 |
| 低音 | ブーミーだが温かみのある音質 | 4.2 |
| 中音 | 距離感がちょうど良く、解像度も高い | 4.5 |
| 高音 | 煌びやかさは無いが刺さらず柔らかな音質 | 4.3 |
| 機能加点 | サウンドモード(NORMAL,CLEAR,BASS)切替可能 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.4 | |
ビクター HA-A20Tは音質重視のエントリーモデルとして、ワイヤレスイヤホン初心者におすすめできる商品だと感じました。
ノイキャンやマルチポイントなどは搭載されていませんが、この柔らかな音質は中華イヤホンにはない魅力でしょう。
中華系の低価格イヤホンはいわゆる強めのドンシャリが多く、なんというか音質が大味なんですよね。
それに比べるとHA-A20Tは暖かみのある低音と、刺さりのない中高音で構成されているので聴き疲れがありません。
ノイキャン非搭載ながら耳栓効果が高く、街中でも音楽に没頭できるのも大きなメリットでしょう。
低予算だけど音質にはこだわりたいという方は、是非手に取って頂きたいワイヤレスイヤホンです。














