デンマークの老舗オーディオブランド、BUNG&OLUFSENからアクティブノイズキャンセリング(=ANC)機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「Beoplay EQ」がリリースされました。
中高音の繊細な表現力は前作を踏襲しながら、ドライバーの大径化によって低音域に厚みと迫力が加わったことが本機最大の魅力です。
原音を正確に伝えることを重視しているためANCはマイルドな調整ですが、そのぶんノイキャンONでも音質の変化はほとんど感じられません。
マイク性能はビジネスシーンでも使用できる品質を備えており、高級感あふれるデザインも含めて落ち着いた大人が持つにふさわしいガジェットという雰囲気です。
少しばかり高価なイヤホンですが、良いものを長く使いたいという方にはおススメの1台です。

Contents
Beoplay EQの通話品質と音質をチェック
まずはこのブログで最も重視している通話品質と音質をみていきましょう。
Beoplay EQのマイク性能
Beoplay EQは片側3マイク×2の6マイクを搭載しています。
また、自分の声を積極的に集音するビームフォーミング技術も使われているので、通話品質には期待が持てるワイヤレスイヤホンです。
マイクテストは休日昼間、かなり混みあっているカフェで実施しました。
【Beoplay EQ マイクテスト】
前作のBeoplay E8 3rd Genの通話品質が素晴らしかったので、Beoplay EQにも大きな期待を寄せていたんですが、マイクテストの結果はちょっと微妙ですね。
音声は若干こもる感じはあるもののしっかり拾えていますし、周囲の人の声などは高いレベルで抑制できているので、本機単体でみると通話品質としては合格点だと思います。
少しハウリング気味なのは、イヤホンを使って通話している方が近くにいたことが原因だと思いますので、これは気にしなくて良いと考えています。
そのうえでBeoplay EQのマイク性能は、前作のBeoplay E8 3rd Genと比較すると音声のこもりと周辺ノイズが増しているように感じられます。
6マイク搭載ということで前作以上のクリアな通話品質を期待していただけに、個人的には少し残念に思ってまして、微妙と申し上げた理由はここにあります。
ただし、これはあくまで比較論。
製品単体で見るとBeoplay EQの通話品質は平均レベル以上であり、テレワークでの使用はもちろんオフィスでのweb会議参加などビジネスユースにも十分耐えられる性能です。
ちなみにアクティブノイズキャンセリング非搭載でも構わないという方は、Beoplay E8 3rd Genのマイク性能も以下の記事でチェックしてみてくださいね。
Beoplay EQの音質
Beoplay EQは前作のBeoplay E8 3rd Genより約1mm大径の6.8mmドライバーを搭載したことにより、低音の迫力が大きく増しています。
そのおかげでBeoplay E8 3rd Genは中~高音に力のあるかまぼこ型でしたが、Beoplay EQは全音域にわたって厚みのあるフラットな音質に進化しています。
透明度の高いクリアな音質はそのままに、ベースやバスドラ、フロアタムなどの楽器の音がより重厚に響き、音質がより引き締まった感じがします。
低音~高音まで音の粒1つ1つがしっかり感じられる透明感のある音質で、そのぶん音楽によってはシャリつきや刺さりを感じる瞬間もありますが、エージングが進めば落ち着くレベルだと思います。
また、Beoplay EQは全音域の清涼感もあいかわらず高いレベルにあり、聴かせたい音にまるでスポットライトがあたっているかのように感じる表現力は健在ですね。
音場定位は目の奥のあたりでこの点も前作と大きな変化はありませんが、音場はかなり広がったように感じます。
Beoplay E8 3rd Genは奥行きこそあれ上下左右の音場はそれほど広くは感じなかったんですが、Beoplay EQは音場が狭いという感覚は全くありません。
低音の厚みが増したことで下方向に音場が広がって感じるのと、音の土台がよりしっかりとしたことで左右方向にも広がりが出たのかもしれません。
なお、専用アプリのイコライザーで音質のカスタマイズが可能で、円の中でポジションを決めるという感覚的な調整を行うアプリケーションになっています。

Beoplay EQのノイズキャンセリング性能
Beoplay EQのアクティブノイズキャンセリング(=ANC)は、雑踏などのノイズは抑えてくれますが、電車の走行音まで完全に聞こえなくなるほど強力ではありません。
フィードフォワード方式とフィードバック方式の両方を採用したハイブリッドANCなので、強めのノイキャンを想像していたのですが比較的マイルドなチューニングですね。
【フィードフォワード方式】
ヘッドホン外側のマイクでノイズを集音し、それと逆位相の音波をぶつけてノイズを消す技術
【フィードバック方式】
イヤホン内側にマイクを配置して本来の再生音と外部からのノイズ両方を集音し、その逆位相の音波をぶつけていったん全ての音を消してから再生音だけを流す技術
強力なANCを搭載している機種で感じるような鼓膜への圧迫感は全く感じられませんし、ANC ONでの音質変化もほぼ無いといって差支えないと思います。
そういった意味ではノイキャンのデメリットというものを気にする必要はなく、音質重視型ワイヤレスイヤホンのANCだなということで納得できるレベルでしょう。
Beoplay EQはもともとイヤホン本体がパッシブノイズキャンセリング(=PNC)効果の高い形状のため、ANCがなくてもそれなりの遮音性は確保されていますしね。
アプリには周辺ノイズにあわせてANC強度が自動で調整されるアダプティブANCという機能がありますが、現時点では自分でノイキャン強度をカスタマイズすることはできません。

この点については自分でカスタマイズしたいという方も多いと思いますが、21年8月中旬に専用アプリのアップデートで11段階での調整が可能になるようです。
このアップデートには期待せずにはいられませんが、Bang & Olufsenは「アーティストの作り出した音をそのまま忠実に再現する」ことを最重要事項としているメーカー。
カスタマイズでどこまでノイキャン強度を上げられるかは、アップデート後に再検証してみたいと思います。
Beoplay EQの外観と装着感
Beoplay EQの本体・充電ケースの外観と装着感などをチェックしていきましょう。
Beoplay EQの本体と充電ケース
Beoplay EQの充電ケースはアルマイト加工を施したアルミニウム合金で、上部にはBANG&OLUFSENのロゴが刻印され高級感と耐摩耗性を両立したデザインになっています。
ケースのサイズはW77mm × D40mm × H26mmで、完全ワイヤレスイヤホンの充電ケースとしては薄くて持ち運びしやすい形状になっています。

ただし、アルミを使用していることから充電ケース単体で50g、イヤホンを合わせると66gと若干重めですので、シャツの胸ポケットでは若干邪魔に感じました。
イヤホン本体は6.8mmドライバーの採用やANC機能搭載などによってBeoplay E8 3rd Genとくらべて大型化していますが、本体上部周囲が大胆に面取りされているのでそれほど大きく感じません。

タッチセンサー部にスピンドル調の装飾が施されたことによりイヤホン本体の高級感も増していて、フラッグシップモデルらしい目を惹くデザインになっています。
カラーはブラックとサンド(ゴールドトーン)、ミッドナイトブラックの3色。

Beoplay EQの装着感
Beoplay EQは前作のBeoplay E8 3rd Genに比べてポート部が若干長く、耳孔の奥までイヤーピースを差し込むような感覚があります。
また、タッチセンサー部も大型化している影響か装着した瞬間に耳と一体化するような装着感はなくなり、おさまりのいい角度を探すような1アクションが必要になったと感じました。

ただし、位置が決まればフィット感は高く、前作同様にパッシブノイズキャンセリング効果は非常に高いワイヤレスイヤホンだと実感させてくれます。
イヤーピースは前作同様にシリコン製が4サイズ(XS,S,M,L)、COMPLYのウレタン製1種類が同梱されています。
Beoplay EQのノイズキャンセリング性能を余すところなく引き出すにはイヤーピースがしっかりフィットしていることが重要な要素ですので、自分に合ったサイズを見極めてください。
同梱のイヤーピースがしっくりこなければ、以下のイヤーピースがおススメですので是非試してみてくださいね。
Beoplay EQの機能と操作性
最後にBeoplay EQの機能や操作性をチェックしてみましょう。
Beoplay EQの専用アプリ
Beoplay EQは専用アプリ「Bang&Olufsen a/s」に対応しています。
Beoplay EQでは、充電ケースのバッテリー残量が確認できるようになり、周囲の環境に応じてANCの強さを調整する「アダプティブANC」のON/OFFボタンが加わりました。

アプリの機能は前作同様必要最低限しか備えておらず、価格の割にはちょっと物足りない感じもします。
【Bang&Olufsen a/sの主な機能】
✓イヤホン本体と充電ケースのバッテリー残量表示
✓コンテンツ再生/停止
✓音量UP/DOWN
✓リスニングモード切替(イコライザー)
✓アダプティブANC ON/OFF
✓自動スタンバイ機能ON/OFF
※21年8月中旬のアップデートでANC11段階調整機能追加予定
8月中旬のアップデートでANC調整機能が追加されるのは歓迎すべき点ですが、できればタッチセンサーのカスタマイズも追加してほしいところですね。
また、Transparency modeの強弱調整が無くなっているのも残念なので、これも復活させてほしい機能です。
Beoplay EQの操作性
Beoplay EQはイヤホン本体のタッチセンサーで操作が可能です。
ただし、アプリでのカスタマイズができないため、タッチセンサーでの操作は以下の表のとおりデフォルト設定のまま使用することになります。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 2回タップ | ANC ⇒ Transparency mode(外音取り込み) ⇒ OFF | 再生/停止 |
| 1回タップ+長押し | 音量DOWN | 音量UP | |
| 通話 | 2回タップ | 受話/切断 | |
1タップでの誤作動を防ぐために、すべて2タップ以上での操作となっているのが特徴的ですね。
気になるのは音量調整で、2タップ目を長押しすることでボリュームのUP/DOWNを行うのですが、音量変化のスピードが早すぎて調整しにくいったらありません。
微妙なボリューム調整はスマホを使うしかないんですが、もう少しゆっくり音量が変化するようにファームウェアのアップデートをお願いしたいと思います。
それと曲送り・曲戻しが設定されていないのも使い勝手という意味では今一歩(この点に関してはファームウェアのアップデート準備中のようです)。
タッチセンサーのカスタマイズ機能への対応は、本機の大きな課題ではないかと思います。
Beoplay EQのおすすめ機能
最後にBeoplay EQのおすすめ機能をいくつかご紹介したいと思います。
ワイヤレス充電と急速充電に対応
Beoplay EQはQi規格のワイヤレス充電に対応しています。
前作のBeoplay E8 3rd Genでは、ワイヤレス充電はUSBの直接接続での充電より30分ほど充電時間が長かったんですが、Beoplay EQではその差10分にまで短縮されています。
また、Beoplay EQでは急速充電に対応したことも大きな進化といえるでしょう。
20分で2時間使用可能と、国産メーカーの急速充電と比較すると若干充電時間が長いものの、機能として装備していないよりは断然使い勝手は良くなっています。
IP54の防塵・防水性能
IPとはInternational Protectionの略で、防塵・防水の国際規格のこと。

IPに続く前の数字が防塵等級、後ろの数字が防水等級を表しており、完全ワイヤレスイヤホンでは、IPX4やIPX5など防水機能のみを備えた製品が多いのが現状です。
Beoplay EQはIP54ですから、防塵等級5、防水等級4に準拠しているということになり、日常使用するのにほこりや雨に神経を使う必要の無いプレテクト性能になっています。
防塵・防水等級はどちらも0等級から始まりますので、防塵等級5は上から2つ目の「正常な動作に支障をきたすような粉塵が内部に侵入しない」というほぼ最高レベルの防塵性能。
ちなみに防水等級4は「いかなる方向からの水の飛沫によって影響を受けない」レベルですので、急な夕立に合ったくらいなら全く問題ない防水性能です。
Beoplay EQ レビューまとめ
それでは最後にBeoplay EQの総合評価と良い点、改善してほしい点を整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | 若干こもるがビジネスでも使用可能 | 4.3 |
| 低音 | 重厚で引き締まった低音 | 4.8 |
| 中音 | 一音一音にスポットライトがあたっているよう | 4.9 |
| 高音 | ややシャリつくが解像度は非常に高い | 4.7 |
| ANC | ハイブリッドANCながらマイルド | 4.0 |
| 外音取込み | 違和感なく使用できるレベル | 4.2 |
| アプリ機能 | 最低限の機能は搭載されている | 4.0 |
| 総合評価 | 4.4 | |
✓低音~高音まで全域で解像度が高く厚みのある音質
✓聴かせたい音にスポットライトがあたるかのような臨場感
✓ビジネスユースも可能な通話品質
✓高級感あふれる充電ケースと本体デザイン
✓aptX Adaptiveに対応
✓IP54の防塵・防水性能
✓ワイヤレス充電対応
✓アプリでタッチセンサーのカスタマイズができない
✓タッチセンサーでボリュームの細かい調整がしずらい
ワイヤレスイヤホンで最も重要な「聴く」という品質について、Beoplay EQは全音域でクリアな解像度と厚みのある音質を備えた一級品といえる製品です。
また、アルマイト加工を施したアルミ製充電ケースや本体の装飾などについても、所有欲を満たしてくれる高級感が感じられるデザインとなっています。
ただ、3万円オーバーという価格を考えると、通話品質がもう少し高ければと若干残念に感じるのと、専用アプリの機能面ももう少し充実させてほしい気がします。
専用アプリについては、ANC強度のカスタマイズやイヤホン本体での曲送り・曲戻し操作など、現時点では実装されていない機能が追加される予定なので、今後もユーザーニーズを反映させてほしいところです。
現時点でも音楽を聴くという点に関しては、支払った対価以上の満足感を得られるイヤホンであることは間違いありません。
ただし、機能面も重視したいという方は8月中旬に実施予定のファームウェアアップデートを待って購入を検討されたほうが良いかもしれませんね。
このブログでもファームウェアのアップデート後の使い勝手については、別記事で紹介していきたいと思います。

















