世界中のレコーディングスタジオで選ばれているマイクやヘッドホンに、AKGというメーカーがあるのをご存知でしょうか。
AKGはオーストリアで設立された音響メーカーで、プロ用のヘッドホンのスタジオシリーズなどは欧米で圧倒的な支持を得ています。
そんなAKGが同社初となるワイヤレスイヤホンを発売したとあれば、これは試してみるしかありません。
先に申し上げておきますが、このAKG N5 Hybridはかなり良きです!
ここのところ本業の仕事が忙しく記事を全く更新できていなかったので、久しぶりに気合いを入れてレビューしていきます。

【良い点】
 〇解像度が高く繊細な表現でありつつ芯の太さを感じる音質
 〇ノイキャン性能はWF-1000XM5などに迫るレベル
 〇通話品質は歴代最強といえるほどのクリアさ
 〇LDAC対応のほか付属ドングルでLC3plusにも対応
 〇装着安定性高く、イヤホン本体の質感も高い
 〇アプリメニューが豊富で操作も直感的
 〇2台のデバイスに同時接続可能なマルチポイントに対応
 〇ワイヤレスチャージ、急速充電に対応
【イマイチな点】
 ✖充電ケースの質感がいまひとつ
 ✖タッチコントロールの完全カスタマイズができない
Contents
AKG N5 Hybridのデザインと装着感
まずはAKG N5 Hybridの充電ケースやイヤホン本体のデザインをみていきましょう。
充電ケースデザインはいまひとつ
AKG N5 Hybridの充電ケースは、

売り出し価格3万円台後半ということを考えると、
まぁ、アルミ筐体にして4万円を越えるよりは、
デザインもいたってシンプルで、
いっぽうでイヤホン本体は、

どこかで見た形状だなと思う方もいるかもしれませんが、
AKGとJBLはどちらもSAMSUM傘下のHARMANグルー
AKGとしては初のワイヤレスイヤホンということもあり、
シンプルな充電ケースやイヤホン本体の共通化のことを考えると、
なお、カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。

ブラックも良いですが、ホワイトも清潔感があって捨てがたい…。
付属のドングルはLC3plus接続用で、USB-C端子を備えるiPhone15ならハイレゾで音楽を楽しむことも可能です。
しっかりした装着感で安定性も高い

AKG N5 Hybridはスティック型ながらかなりしっかりとした装着感で
したがって装着安定性はかなり高く、
通常のスティック型は、
スティック型のイヤホンの装着感が軽いと感じるのは、
しかしAKG N5 Hybridは、耳に当たる部分の形状が、スティックのないカナル型
スティック部分はマイクに指向性を持たせるためで、
しかもスティック部分がタッチコントロールになっているので、
これなら耳の小さな女性が装着してもイヤホンが大きすぎる印象はなく、スタイリッシュな見た目になっています。
AKG N5 Hybridの音質と通話品質
AKG N5 Hybridの音質と通話品質をチェックしていきましょう。
透明感が高く骨太なサウンド
AKG 5N Hybridは若干低音にボリューム感があるものの、全体的にはフラットな音質。
各帯域とも解像度が高く、その点においては有線なみといわれるSONY WF-1000XM5やTechnics EAH-AZ80とも遜色ありません。
両者との違いは一音一音にしっかりとした厚みがあり、音にぼやけたところが無く輪郭がはっきりしているところでしょうか。
とくに低音は他のワイヤレスイヤホンに比べて最もタイトに鳴っていて、パワフルさと繊細さが同居したまさに有線クオリティ。
高音の細かな表現力は有線に比べるとさすがに劣りますが、それでもワイヤレスイヤホンとしてはトップクラスだと断言できます。

個人的に高音の表現力はEAH-AZ80がもっとも優れていると思っていますが、そのぶん線の細さを感じるんですよね。
AKG 5N Hybridの高音はEAH-AZ80と同じくらい繊細ながら、一音一音にエネルギーが感じられるのが大きな違いだと思います。
またボーカルも非常にクリアで、その透明度の高さはAKGサウンドならではといったところでしょう。
全体的に音が近い感覚ですが、音場が広く上方向の抜けも素晴らしいため煩いようには感じません。
AKG 5N Hybridの音質をまとめると、繊細さと力強さが絶妙にバランスしたハイクオリティサウンドという表現でしょうか。
得意不得意というジャンルはなく、どんな音楽にも合うという万能タイプなイヤホンだと思います。
なお、AKG 5N Hybridは付属のUSB-Cドングルを使うことによって、LC3plusでの24bit96KHzのハイレゾ再生が可能。

これはiPhone15でハイレゾ再生ができるということを意味するので、同機種ユーザーにとっては大きなメリットでしょう。
ただし電車の中などでは接続が不安定になることがあり、いつでもストレスなくハイレゾを楽しめるというわけではありません。
このあたりはiPhoneの宿命とでもいうべきところで、自宅内など接続の安定した場所用と割り切るしかなさそうです。
とはいえ、AAC接続でも繊細で見通しの良いAKGサウンドは十分に感じることができます。
したがってiPhoneユーザーにもおススメであることにかわりはありません。
2024年度は始まったばかりですが。いきなり音質で頭一つ抜けたイヤホンが出てきたなと感じました。
マイク性能は最強クラス
AKG N5 HybridはZoom認証済みの高通話品質を謳っていますが、実際に試してみたところ驚きの通話性能でした。
まずはその実力を確認して頂きたいのですが、以下は比較的混雑している量販店の店内でマイクテストをしたものです。
【AKG N5 Hybrid/Bluetooth接続】
 
【AKG N5 Hybrid/ドングル接続】
Bluetooth接続と2.4GHzワイヤレスの両方を試してみましたが、どちらも音声、ノイズ抑制共にかなり優秀なことがおわかりいただけると思います。
まず気が付くのが、自分が声を発する前から周辺ノイズがしっかりと抑制されていること。
自分が声を発するまでは周辺ノイズの抑制が効かないモデルが多いんですが、AKG N5 Hybrid は最初から周辺ノイズが聞こえません。
店内ではBGMが流れていたんですが、それもほとんど聞こえませんね。
また、周囲でかなり多くの人が会話していたんですが、これだけ人の話し声が抑制されているのは驚きです。
AKGのオリジンといえばコンデンサーマイクですから、N5 Hybridもその血脈を受け継いでいるということでしょうか。
ちなみに両者を聴き比べてみると、音声の明瞭さはいずれも同じくらいですが、周辺ノイズ抑制は2.4GHzワイヤレスが一段上ですね。
AKG N5 Hybridの通話品質をスコアリングすると以下の通りで、これは歴代トップクラスのレベル。

正直なところ、個人的にワイヤレスイヤホンの通話性能も来るところまで来てしまったかなと思っていました。
ところがこれほどの通話品質を突き付けられると、まだまだ進化は止まらないんだなと考えを改めなければなりませんね。
AKG N5 HybridのANCと外音取り込み性能
AKG N5 Hybridのアクティブ・ノイズキャンセリングと外音取り込み性能について確認していきましょう。
トップクラスに迫るノイキャン性能
AKG 5N Hybridのアクティブノイズキャンセリング(=ANC)は、かなり高レベルな仕上がりになっています。
イヤホンを装着してANCモードにした瞬間「お!ノイキャン結構強いな」と感じます。
人の話し声は聴こえるもののノイズはかなり低減されており、SONY WF-1000XM5など最強勢に迫る出来栄えという印象。
カフェ店内はもちろんのこと、これなら電車内で音楽を楽しむにも十分なノイキャン性能でしょう。

なお、ノイズキャンセリングはアダプティブノイズキャンセリングとカスタムの2種類から選択が可能。

アダプティブノイズキャンセリングとは、周囲のノイズレベルに合わせてリアルタイムでノイキャン強度を自動補正する機能です。
カスタムを選択した場合、ノイキャン強度は7段階で調整することができるようになっています。
外音取り込み性能は通常レベル
AKG N5 Hybridの外音取り込みは実用的にはまったく不満はないものの、イヤホンを着けていないと感じるレベルには到達していない印象。
コンビニのレジで店員と会話したり、電車内のアナウンスを聞くというシーンでは何ら困ることはない音質です。
いっぽうでほんの少し高音にフォーカスしているような感覚があり、イヤホンを着けていないくらい自然かといわれると一歩及ばないかなと感じます。
そういった意味では、外音取り込み性能が最重要という方でなければ不満を感じることはないはずです。
外音取り込みレベルはノイズキャンセリング同様に7段階から選択が可能。

取込みレベルを上げるほど周辺のざわめきのようなノイズを拾いやすくなるので、個人的にはLevel4くらいがちょうど良いと感じました。
AKG N5 Hybridの機能について
AKG N5 Hybridの機能面についてチェックしていきましょう。
専用アプリは使いやすく機能も充実
AKG N5 Hybridには専用アプリが用意されていて、イヤホンを色々とカスタマイズして使うことができるようになっています。
アプリは直感的に操作でき、デザイン性も高くなかなかの出来栄え、

メニューの充実度もかなりレベルが高い印象で、欲しい機能はほとんど揃っていますね。
ここでは代表的なメニューをご紹介していきます。
イコライザーで音質チューニング可能
AKG N5 Hybridは、専用アプリにイコライザーが用意されています。
5種類のプリセットに加え、10バンド(32kHz~

実際にチューニングしてみると、
微妙な調整にもしっかり応えてくれるし、
このあたりはさすがAKGチューニングといったところでしょう。
イヤホン本体のタッチコントロール
AKG N5 Hybridはイヤホン本体のタッチコントロールで様々な操作が
デフォルトの操作は以下の通りで、タッチコントロールの感度はちょうど良い感じですね。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回押し | ノイズキャンセリング ⇒ アンビエントアウェア ⇒ OFF切替」 | 再生/一時停止 | 
| 2回押し | トークスルー ON/OFF | 次の曲へ | |
| 3回押し | - | 曲戻し | |
| 2秒長押し | ボイスアシスタント起動 | ||
| 通話 | 2回押し | 着信応答/通話終了 | |
| 2秒長押し | マイクミュート ON/OFF | ||
操作カスタマイズは可能ですが、音量コントロール、

できればここは完全カスタマイズして欲しかったところですね。
個人的によく行うアクションは再生停止、音量上下、ANC⇔
AKG N5 Hybridのアプリの仕様では、
ここが解消されればより使いやすくなるので、ファームウェアのアップデートで完全カスタマイズに対応して欲しいところです。
デバイス2台同時接続可能なマルチポイントに対応
AKG N5 Hybridは2台のデバイスに同時接続できるマルチポイントに

このマルチポイントという機能は、
たとえば通勤時にプライベートスマホにN5 Hybridを接続して音楽を聴いていたとしましょう
このときマルチポイント機能を使って、
そうすると仕事用携帯に着信があれば、
もちろんこの時、プライベートスマホの音楽は一時停止し、
着信応答、通話終了ともにイヤホンん操作だけで完結しますので、
以上は使い方の一例ですが、
パソコンとスマホ、ゲーム機とタブレットなど、
この機能は一度体験すると後戻りできないくらい便利なので、
バッテリー性能や防水も死角なし
AKG N5 Hybridはノイズキャンセリング使用時にイヤホン本体で約8時間、充電ケース併用で約32時間というバッテリー性能を誇ります。
また、急速充電にも対応しており15分の充電で約4時間の音楽再生が可能。
もちろんQi規格のワイヤレス充電にも対応しています。
ワイヤレスイヤホンを使いはじめて最も気を遣うのがバッテリー残量なんですが、これだけの性能であればまず困ることはないでしょう。
くわえて防塵・防水性能もIP54となっており、ほこりや雨にもある程度の強さを備えています。
ちなみにIP54というのは、多少の砂埃やにわか雨程度ならイヤホン本体に大きな影響が出ないレベルの防塵・防水性能。
街中など外出時にも使用環境をあまり気にせず音楽を楽しむことが可能です。
AKG N5 Hybridのレビューまとめ
それでは最後にAKG N5 Hybridの総合評価と、実際に使ってみて感じたことをまとめていきましょう。
| 評価項目 | Impression | Score | 
| 通話品質 | トップクラス(ドングル接続でさらにクリアな通話となる) | 5.0 | 
| 低音 | タイトで粒立ちが良く全体を下支えする上品な迫力あり | 4.8 | 
| 中音 | ボーカルが近く透明感がありながらもエネルギッシュな音質 | 4.8 | 
| 高音 | 解像度が高く華やかな印象 | 4.9 | 
| ANC性能 | 最強には一歩及ばないがトップクラスの性能 | 4.7 | 
| 外音取込み | 普段使いには支障のない平均的なレベル | 4.6 | 
| アプリ機能 | デザイン面、操作面、メニュー充実度いずれも高レベル | 4.7 | 
| 機能加点 | LC3plus対応(付属USB-Cドングル使用時) | 5.0 | 
| 機能加点 | LDACに対応 | 5.0 | 
| 機能加点 | マルチポイントに対応 | 5.0 | 
| 総合評価 | 4.9 | |
AKG N5 Hybridを実際に使ってみて感じたことは「これは2024年度最強イヤホンになる可能性があるな」ということでした。
まず音質がかなり良く、AKGらしい透明感のある見通しの良いサウンドは期待以上のクオリティでした。
付属のUSB-Cドングルを使えばLC3plusで24bit96kHzの高音質接続が可能というのも好ポイント。
iPhone15以降という制約はありますが、ワイヤレスイヤホンとiPhoneの組合せでハイレゾを楽しめる貴重な存在です。
圧巻だったのが通話品質の高さで、歴代のワイヤレスイヤホンのなかでも最強といって良いほどの出来栄えです。
ノイズキャンセリングもWF-1000XM5など最強には少し足りないかなとはいえ、このレベルなら日常使いには何ら不満を感じることはないでしょう。
マルチポイントやワイヤレスチャージにも対応していますし、アプリ機能も満足できる仕上がりです。
個人的に不満な点といえば充電ケースのクオリティですが、もしマグネシウム筐体なら4万円超えだったと思えば致し方ないかなと。
為替や部材の高騰でプレミアムイヤホンは4万円台でもおかしくない状況。
最近個人的には「新製品が出るたび値段が上がっていて、価格と性能のバランスに疑問を感じるなぁ」と思っていました。
しかしAKG N5 Hybridは久しぶりに「この性能でこの価格なら安い!」と思えた1台。
2024年度はまだ始まったばかりですが、AKG N5 Hybridは年度最強の可能性があるイヤホンとして自信をもってご紹介します。




 
  
  
 










