SONYから新しい完全ワイヤレスイヤホンLinkBUdsがリリースされました。
LinkBudsは振動版の中心部が解放されているリング型ドライバーユニットを採用し、イヤホンをしていても周囲の音が聞こえるというコンセプトの商品です。
耳をふさがないという点ではAfterShokzと同じですが、これを完全ワイヤレスイヤホンとして商品化したのがLinkBudsのすごいところで、着けているのを忘れるほどの軽量化・小型化が実現されています。
カナル型やオーバーヘッド型のように音を逃がさない構造になっていないため、低音の厚みという点においては不足感がありますが、中音~高音は豊かで解像度の高い音質になっています。
また、通話品質が非常に高く、個人的にはこれまでのSONY製品の中ではダントツの通話性能だと感じています。
没入感の高いサウンドを楽しみたいという方はカナル型イヤホンやオーバーヘッド型のヘッドホンを購入すべきですが、セカンドイヤホンとして、もしくは音楽はBGM的に聴ければ良いというユーザーにはおススメしたい商品です。

Contents
SONY LinkBudsの通話品質と音質
SONY LinlBudsの通話品質と音質をチェックしていきましょう。
LinkBudsの通話品質
SONY LinkBudsは、メーカーホームページでは高度な音声信号処理を行う高精度ボイスピックアップテクノロジーにより、高い通話品質を実現しているとされています。
装着者の声とそれ以外の環境ノイズをAI機械学習で構成されたアルゴリズムによって分離し、騒がしい場所でも声をクリアに抽出できるとなっていますが、その実力の程を試してみました。
マイクテストは着席率9割ほどの夕方のカフェ、軽くBGMも流れている環境下で実施しました。
【SONY LinkBuds マイクテスト】
マイクテストの結果から、LinkBudsの通話品質は相当高いことがお分かりいただけると思います。
周辺ノイズはほぼカットされており、BGMもかなり抑えられています。
周囲の人の話し声については近い席の人のものしか混入しておらず、ざわざわとした喧騒のような音は全くといって良いほど聞こえません。
WF-1000XM4のように骨伝導センサーは搭載していないので、あくまで環境ノイズと自分の声をAIがどう切り分けるかに頼るシステムですが、相当優秀な出来栄えだと思います。
この製品のリリース情報を見た時、これは通話品質さえ良ければオフィスで常時装着して使えるものではないかと直感しましたが、まさにその通りの使い方ができるのではないでしょうか。
リモートミーティングが1日に何コマも入っていて、ミ―ティングの合間には電話連絡やFace to Faceの打ち合わせもこなさなければならないという忙しいビジネスパーソンには、うってつけの商品でしょう。
連続通話時間は2.5時間ですが、充電ケースで約2回分の充電ができますので、片側使用なら1日中会議が連続してもバッテリー切れを起こす心配もなさそうです。
なによりイヤホン本体が小さくて軽いので、長時間装着でも痛みを感じないのであれば、オフィスで一日中着けていても違和感がないというのも大きなメリットだと思います。
LinkBudsの音質
SONY LinkBudsは、振動版の中心部が解放されている12mmリング型ドライバーユニットが採用され、クリアな中高音が特長だとされています。
WF-1000XM4の採用されている統合プロセッサーV1を搭載、また、圧縮音源の高音域をクリアに再現する「DSEE」も搭載されており、音質についても妥協しない姿勢がうかがえます。
実際に聴いてみると、スマホのボリュームをある程度上げて周辺ノイズに負けない音量にすると、中高音域の音質はカナル型の高価格帯機種と遜色のない音質だと感じます。
中高音域の解像度は非常に高く、耳の中にイヤーピースが入っていないぶん開放的なのも手伝って、すっきりした聴き心地という表現がしっくりくるように思います。
ただし、低音域はどうしても厚みが足りないというのが正直なところで、こればかりは仕方がないと整理するしかないと思います。
重低音~低音はイヤーピースやイヤホン本体の密着度と大きく関係しますので、ながら聴きというコンセプトのLinkBudsにそれを求めるべきではないでしょう。
そのかわり、ながら聴きをするためのイヤホンだと割り切れば、ながら聴きではもったいないくらいのクリアで密度の濃い音質だと感じられるはず。
そういった意味では、会話の機会を逃したくない、通話中心に使いたい、装着時の圧迫感を感じないイヤホンが欲しいなど、カナル型イヤホンでは実現するのが難しいニーズを満たせる商品だと思います。
なお、専用アプリのイコライザーの充実ぶりはSONY製品ならでは。
9種類の音楽用プリセットと完全カスタマイズが用意されていて、CLEAR BASSという低音の音量を設定することも可能です。

なお、リング型ドライバーということで音漏れが心配でしたが、iPhoneのボリュームを半分くらいに調整したところで音漏れがわかる程度です。
遮音性を捨てた製品なので電車など交通機関での使用は想定していないと思いますが、オフィスでの使用で軽く音楽を流すくらいなら周囲に音漏れすることはないと思います。
SONY LinkBudsの外観と装着感
SONY LinkBudsのイヤホン本体と充電ケース、装着感などを順に見ていきましょう。
LinkBudsの本体と充電ケース
SONY Link Budsの充電ケースはかなりコンパクトになっています。

充電ケースそのものは手の平にすっぽり収まるほどの小ささで、Link Budsの独特の形状をした本体がこの中に納まっているのかと思うと驚きのサイズ感です。
また、この充電ケース込みで最長17.5時間の連続再生、10分の充電で90分の再生が可能となっているので、外出先で丸1日使ってもバッテリー切れを起こすことはないでしょう。
本体は本当に軽く小さくて、WF-1000XM4の約半分という筐体に、非常に多くの機能が搭載されているというのにもSONYの底力を感じずにはいられません。

手に平に乗せた感じは上の画像の通りですので、その小ささは感じ取って頂けるのではないかと思います。
ひょうたん型の形状は外音を常に取込むというコンセプトを実現するためのものですが、この形状もイヤホン本体を最小化するために非常に良く考えられたデザインだと感心します。
なお、カラーバリエーションはホワイトとグレーの2色が用意されています。

ホワイトにはうっすら大理石のような模様が入っており、グレーは少し白っぽいマットブラックと表現したほうがよさそうな色合いに仕上げられています。
どちらも落ち着いたカラーなので、年齢や性別を問わず使うことができるのではないでしょうか。
LinkBudsの装着感
SONY LinkBUdsの装着感は、とにかく軽いの一言に尽きます。
耳の中にイヤーピースを入れるカナル型イヤホンと比較して圧倒的に着け心地が軽く、インナーイヤー型よりもさらに軽い感じがします。
最初装着したときにはいまひとつどう着けるのか分からずに耳から落ちてしまったんですが、しっかり装着すれば落下する心配はありません。
装着を安定させるにはフィッティングサポーターと呼ばれるフックのようなものが重要なパーツになっていて、XS/S/M/L/XLと5種類の中から自分の耳に合うサイズを交換できるようになっています。

しばらく使ってみたところ、フィッティングサポーターにあまりサイズの大きなものを選ぶとドライバー部分が斜め下に押されて、耳珠や大珠が少し痛くなりました。
LinkBudsが落下せずに、さりとてドライバーの接触ヵ所に痛みが出ないようちょうど良いサイズのフィッティングサポーターを選択することが、快適に使うための大きなポイントになるでしょう。
SONY LinkBudsの専用アプリ
SONY LinkBudsは専用アプリが用意されており、充実した機能が搭載されています。
LinkBudsアプリホーム画面とメニュー
SONY LinkBudsは専用アプリ「Headphones Connect」に対応しています。
アプリトップ画面は以下の通りで、イヤホン本体と充電ケースのバッテリ―残量、再生中のコンテンツ表示、ボリュームコントロールなどが出来るようになっています。

最近の専用アプリはホーム画面でボリュームコントロールができないものが増えてきているように感じていますが、個人的にはこの機能があると使い勝手が良いなと思っています。
なお、アプリで出来ることは以下の通りで、最新の機能について少し詳しく説明していきます。
専用アプリで出来ること
✓スピークトゥチャットの詳細設定
✓360 Reality Audio設定
✓アダプティブボリュームコントロール ON/OFF切替
✓タップ操作の割当て変更
✓ワイドエリアタップ ON/OFF
スピークトゥチャット詳細設定
SONY LInkBudsには声を出すと自動で音楽の再生を停止して、スムーズに会話をすることができるスピークトゥチャットという機能が搭載されています。
実際に使ってみると、デフォルト設定のままだと周囲に聞こえないくらいの声でブツブツ独り言を発しただけでモードが起動するくらい感度が高いです。
スピークトゥチャットは、専用アプリで声の検出感度とモードが終了するまでの時間を変更することが可能なので、ひとりごとの多い方はこの機能をOFFにするか低感度に設定しておくことをおススメします。。

また、モードが終了するまでの時間というのは、自分が声を発するのをやめてからどのくらいの時間でコンテンツを再生させるかを決めるものです。
5秒、15秒、30秒、自動で終了しないの4パターンから選べるのですが、会話ということを考えると15秒以上を選択することになると思います。
非常に優れた機能ですが、LinkBudsはボリュームを下げれば話し声は聞こえるイヤホンなので、スピークトゥチャットを使うかどうかはちょっと微妙かなと感じました。
LinkBudsのタップ操作変更設定
SONY LinkBudsは、専用アプリでタップ操作の設定変更を行うことができます。
タップ操作の変更は以下の左の画像の通り、アプリメニュー「システム」のタップ操作の機能を変更の右下にある歯車マークを押して編集画面を開きます。

左右それぞれのイヤホンに再生コントロール、音量コントロール、曲選択、音声アシスト、Amazon Alexa、Quick Access(Spotify再生)、割当て無しのいずれか1つを割当てることが可能です。
少し残念なのは、たとえば左のイヤホンのタップ2回に曲再生、タップ3回に音量コントロールなど、異なる機能を割当てることはできない仕様になっていることですね。
複数機能を設定することがでればさらに使い勝手が向上しそうなので、ファームウェアのアップデートで対応して欲しいところです。
SONY LinkBudsの機能
SONY LinkBudsの便利な機能を確認していきましょう。
顔を触って操作するワイドエリアタップ
SONY LinkBudsはイヤホン本体だけでなく、耳の周囲の顔をタップすることでもイヤホン操作を可能にするワイドエリアタップを搭載しています。
実際に操作してみましたが、イヤホン本体に触れるより格段に操作がしやすいと感じました。
イヤホン本体って意外と一発で触れずに、2回タップするつもりが1回になったり、3回タップが2回になったりして誤動作することが多いんですよね。
それに比べて自分の顔ならタップする位置を間違えることも無いので、誤動作によるストレスは全く感じません。
また、LinkBudsにはタップ1回の設定が無いので、うっかり顔を触っても誤動作する可能性が低いというのもよく考えられているなと感心した点です。
アゴのあたりを触ってもイヤホンが反応することがあるので、タップ1回の操作設定をあえて捨てたのではないかと思います。
この技術は是非ともカナル型イヤホンにも取り入れて欲しいなと思いますね。
Microsoft Soundscapeとの連携
SONY Link Budsは、Microsoftが提供する3Dオーディオマップアプリ「Microsoft Soundscape」と連携し、頭の向きを認識できる機能を搭載しています。
これによってスマホを手に持たなくても目的地の方向をビーコン音で認識することができるので、感覚的にどちらの方角に進めばいいのか分かるというメリットがあります。
スマホでの地図検索を使うと、目的地は表示されているものの地図の向きがよくわからなくて全く逆方向に歩きだしてしまうということがよくある方には便利な機能だと思います。
なお、この機能は視覚障がいのある方の街歩きを豊かにする可能性を秘めていることから、個人的には非常に注目しています。
2万円程度の価格の家電品が、アプリとの連携で不自由さを緩和できる世界がすぐそこまで来ているのかなと思うと、技術の進化ってすごいと思わずにはいられません。
こういったワクワクするような機能が搭載されるのもSONYの製品ならではのことだと思えますね。
LinkBudsの立体音響との親和性
SONY LinkBudsは、360 Reality Audio認定モデルであるばかりでなく、Sound ARアプリLocatoneにも対応しています。
360 Reality Audioは、専用アプリで耳の形やヘッドホンの特性への最適化を行うことにより、イヤホンの装着者がより臨場感を感じられる技術で、さながら音が降り注ぐような感覚を体験することが可能です。
また、LocatoneはSONYによるSound ARを楽しむためのエンタテインメントアプリで、LinkBudsに内蔵されているモーションセンサーにより、顔の向きに音の向きも連動させることができるものです。
Locatoneは2021年9月17日に公式サイトがオープンしたばかりの新しい取り組みなので、まだまだコンテンツ不足の感は否めません。
しかし、LinkBudsはMicrosoft Soundscapeとの連携などあらたな試みが盛り込まれており、個人的には今後の発展が非常に楽しみな製品だと感じています。
SONY LinkBudsのレビューまとめ
それでは最後にSONY Link Budsの総合評価と、良い点・改善してほしい点を整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | オフィスでも積極的に使用可能 | 5.0 |
| 低音 | 製品の特性上厚みに欠ける | 4.0 |
| 中音 | クリアでボリューム感のある中音 | 4.8 |
| 高音 | 解像度が高く繊細な高音 | 4.7 |
| アプリ機能 | 多機能だがタップ割当て仕様が残念 | 4.5 |
| 機能加点 | ワイドエリアタップ | 5.0 |
| 機能加点 | MS Soundscapeとの連携 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.7 | |
✓ながら聴きという新しいスタイル
✓オフィスでも使用可能な高い通話品質
✓中高音はカナル型の高価格帯イヤホン並みの音質
✓低音量では音漏れを気にする必要は無い
✓イヤホン本体、充電ケースともに非常にコンパクト
✓軽い着け心地(インナーイヤー型以上に軽い)
✓ワイドエリアタップによる操作感向上
✓MS SoundscapeやLocatoneとの連携
✓360 Reality Audioに対応
✓タップ操作変更の自由度改善
SONY Link Budsは、ながら聴きというイヤホンの新しい使い方をユーザーに提案する製品です。
音楽を流すことによって得られるリラックス効果は、個人的にはオフィスで仕事をしている時でも完全に否定するべきものではないと思います。
しかし、自分だけが勝手にスピーカーで音楽を流すわけにはいきませんし、カナル型のイヤホンを使うと人に話しかけられた時に気付かないというデメリットがあります。
SONY LinkBudsはそんなジレンマに応え、新たなライフスタイルを提案するというコンセプトで開発された商品なんですね。
耳をふさがない構造なので音質は犠牲になっているんだろうという先入観を持っていましたが、中音~高音は高価格帯イヤホンと遜色のないサウンドを楽しむことができます。
さすがに低音の厚みは足りませんが、それも「ながら聴き用のイヤホン」と割り切ってしまえば許せる範囲というか、それ以上の高音質だという評価をして良いでしょう。
通話品質も発売時点としては間違いなく業界トップクラスの出来栄えで、オフィスはもちろんカフェなどでもビジネス通話が十分可能なレベルに達しています。
また、Microsoft SoundscapeやLocatoneとの連携は、イヤホンの新しい使い方を提案するSONYらしい取り組みで、今後に期待が持てると感じています。
SONY LinkBUdsは、コミュニケーションを伴う色々なシーンでも音楽は欲しいというユーザーには、非常におススメな商品だと思います。
















