ALLY PLUS 2は米国Cleer社製の完全ワイヤレスイヤホンで、通話品質・音質・アクティブノイズキャンセリングなど総合的なポテンシャルが非常に高い製品です。
米国Cleerはあまりなじみのないブランドですが、SONY USで長年オーディオ部門に在籍していた創業者パトリック・ファンが2012年に設立したオーディオブランド。
設立後10年間で数々の製品が国際的なオーディオ賞を受賞し、瞬く間にトップブランドとして認知されたという経歴を持ちます。
元SONYや元Foster/Fostexの熟練日本人エンジニアを抱え、日本人好みの繊細な音質表現ができること。
また、Qualcomm社とのリファレンス設計を手掛けるファクトリーと提携していることがCleerの強みで、ALLY PLUS 2にもその強みが大きく活かされています。
ALLY PLUS 2は、2万円以下で通話も音質もノイキャンも性能の良い完全ワイヤレスイヤホンが欲しいと考えている方には、非常におススメの製品です。
そんなALLY PLUS 2を今回は徹底的にレビューしていきます。

Contents
Cleer ALLY PLUS 2の通話品質と音質
Cleer ALLY PLUS 2の通話品質と音質をチェックしていきましょう。
ALLY PLUS 2のマイク性能
ALLY PLUS 2の製品ホームページには、デュアルマイクテクノロジー+Qualcomm cVc(第8世代)で高い通話品質を実現したとの記載があります。
しかし、通話用のデュアルマイクはそう珍しい仕様ではありませんし、僕がこれまで試してきた製品からはQualcommのSoCに頼った通話品質には限界があると感じています。
そんなわけで、あまり大きな期待はせずにALLY PLUS 2のマイクテストを実施したんですが、その先入観は良い意味で大きく裏切られることになりました。
マイクテストは昼過ぎのカフェで、着席率6割程度、軽くBGMも流れている状況で実施しました。
【ALLY PLUS 2 通話品質】
マイクテストの結果から、ALLY PLUS 2の通話品質は相当高いということがお分かりいただけるかと思います。
まず、自分の声にこもった感じがほとんどなく非常にクリアに聴こえます。
また、周囲の人の話し声やノイズもかなり低減されており、これならオフィスでのリモートミーティングに全く問題なく使えますし、カフェからのビジネス通話も可能でしょう。
こういう通話品質の高い完全ワイヤレスイヤホンに出会うと、ビジネス通話やリモートミーティングの準備がほんとうに楽になります。
イヤホンさえ装着しておけば通話時に片手がふさがることがないですし、携帯やパソコンにケーブルをつないだり、使い終わったイヤホンをしまう時にケーブルを巻き取る必要がないですから。
ALLY PLUS 2は2022年に入って3機種目のレビューとなりますが、早々に通話品質の高いTWSに出会えてかなりテンションが上がりました。
ALLY PLUS 2の音質
ALLY PLUS 2には、10mmの大口径ダイナミックグラフェンドライバーが搭載されています。

20個に分割したレアメタルを振動板の後ろにリング状に最適配置して、中音域の歪み成分を従来の6分の1にまで抑えることに成功したとのこと。
なるほど聴いてみると、フラットながら全音域に厚みが感じられる没入感の高い音質で、音の分離感も良くかなり完成度の高いサウンドに仕上がっていると感じます。
どちらかというと中高音域の表現が得意なイヤホンだという印象ですが、低音域の不足を感じるようなことはなく、むしろ低音もタイトにしっかり鳴っています。
「うーん…」としばらく聴いていて気付いたんですが、このように感じる理由は中高音域の解像度の高さによるものですね。
ギターやハイハットなどが全体の音にまぎれずしっかり聴こえ、音の消え際が黒に吸い込まれていくような余韻も感じられます。
フラットな音質というのは、ともすればサラッとした淡白なサウンドに感じ取れる機種が多いように思うのですが、ALLY PLUS 2は濃厚なフラットという表現がぴったりくるように思います。
なお、ALLY PLUS 2の音質チューニングには、ソニーやフォステクス出身の日本人音響エンジニアが加わっているとのことで、それゆえ細やかなサウンド表現ができているんだと納得です。
ただし、少し残念なのが音場がそれほど広くないことでしょうか。
これで音場が広ければ、SONY WF-1000XM4やTechnics EAH-AZ60とも戦えるのでは?と思わせるほど音質の完成度が高いイヤホンだと思います。
なお、ALLY PLUS 2には専用アプリにイコライザーが搭載されています。

プリセットイコライザーは無くカスタマイズのみ、64Hz~8kHzの5バンドで調整が可能となっています。
Cleer ALLY PLUS 2のANCと外音取り込み性能
ALLY PLUS 2のアクティブノイズキャンセリング(=ANC)と外音取り込み性能についてみていきましょう。
ALLY PLUS 2のANC性能
ALLY PLUS 2のANCは、フィードフォワードとフィードバックを組み合わせたハイブリッド方式を採用しています。
【フィードフォワード方式】
ヘッドホン外側のマイクでノイズを集音し、それと逆位相の音波をぶつけてノイズを消す技術
【フィードバック方式】
イヤホン内側にマイクを配置して本来の再生音と外部からのノイズ両方を集音し、その逆位相の音波をぶつけていったん全ての音を消してから再生音だけを流す技術
最大-34dBのノイズキャンセリング性能であり、カフェなどでの周囲のざわつきはきれいに消し去ってくれますし、電車内の走行音もかなりカットしてくれます。
SONY WF-1000XM4などのANCよりは少し弱めではありますが、実際に使用して「ノイキャン弱いな…」と感じることはないでしょう。

便利機能として、周囲の環境騒音に応じてANC強度を自動的に調整されるスマートモードを搭載しており、アプリ画面でON/OFFの切り替えができるようになっています。
なお、ANC ONでの音質変化はそれほど大きくはありませんが、若干低音が増してボーカルがほんの少し沈む(他の音に埋もれる)感じがします。
とはいえ気になるほどの音質変化ではなく、違いを説明するために集中して聴いてみた場合はそう感じるというものです。
ANC ONでの音質変化が大きいか小さいかということであれば、小さいと表現して差し支えないレベルの変化であることは間違いありません。
したがって、総合的に判断するとALLY PLUS 2のノイキャン性能は非常に優秀だと思います。
ALLY PLUS 2の外音取り込み性能
ALLY PLUS 2には外音取り込み(アンビエント)モードが搭載されていて、専用アプリで取込みレベルを10段階に調整できるようになっています。

強度の調整はアプリのホーム画面で行えるんですが、外音取り込み強度って頻繁に変更することはないので、個人的には設定メニューにおいても良かったんじゃないかと思います。
まぁ、細かい話なんでどうでもいいんですが…。
なお、外音取り込みレベルを最大の10にすると、周囲の音が増幅したように聞こえるのでちょっとうるさく感じます。
個人的に自然に聞こえるちょうど良い調整は、レベル5くらいですね。
ちょうど良いレベルに調整できれば周囲の音は自然に聞こえるので、外音取り込みモードを使って違和感を感じるということはありません。
Cleer ALLY PLUS 2の外観と装着感
ALLY PLUS 2のイヤホン本体や充電ケースなどの外観と、装着感について確認していきましょう。
ALLY PLUS 2の本体と充電ケース
ALLY PLUS 2の充電ケースは少し大きめのサイズで、手の小さい方だと手の平いっぱいのサイズといったところです。

特長的なのは、上蓋が透明でイヤホン本体が見えるようなデザインになっていること。
デザイン的にはなかなか良いと思うんですが、透明な部分が傷つくと目立ちそうなので、少し扱いに気を遣うように感じますね。
持ち運ぶ際には、小型のポーチかなにかに入れたほうが良いのではないでしょうか。
イヤホン本体も比較的大きめで、ベルがさかさまになったような形状をしています。

フェイスプレート周囲に施されたシルバーがアクセントになっていて、シンプルなデザインながらチープさは感じさせません。
通話品質・音質共にレベルの高い機種なだけに、このデザインのさりげなさがかえって「良いものをわかって使っている」という自己表現につながりそうな気がします。
カラーバリエーションはいまのところホワイトのみとのことですが、米国ではブラックもリリースされているようです。

Yahooショッピングではブラックも購入可能なようですが、並行輸入品のためホワイトより5千円~1万円程度高くなっているので実際はホワイト一択でしょう。
ALLY PLUS 2の装着感
ALLY PLUS 2はエルゴノミック構造が採用されていて、様々な耳の形にやさしくおさまる形状になっているとメーカーホームページに記載があります。
実際に装着してみると「やさしくおさまる」という着け心地という表現がしっくりくる感じで、耳と一体になるようなハードな装着感ではありません。
イヤホン本体がピタッと密着するのではなく、少し浮いているようなフワッとした装着感で、イヤーチップで安定させるタイプですね。
それゆえイヤホン本体の耳への圧迫感が少ないというメリットがある反面、激しく頭を振ると少しずれてきそうな感じがします。
したがって、ランニングなどワークアウトで使いたいというユーザーは、Jabra Elite 4 Activeなどもう少し装着安定性の良い製品を選んだほうが良いでしょう。
いっぽう自宅や街中での移動中、ビジネスでの使用を想定しているユーザーなら、圧迫感がないぶん長時間使用にも適した製品なのでおススメですね。
なお、同梱イヤーピースには耳の奥まで差し込むラウンドイヤーチップがXS/S/M/L/XLの5サイズ、浅めの装着感のライトアングルイヤーチップがS/M/Lの3サイズが用意されています。
Cleer ALLY PLUS 2の専用アプリ
ALLY PLUS 2には専用アプリが用意されています。
アプリホーム画面とメニュー
ALLY PLUS 2には専用アプリ「Cleer+」が用意されており、便利な機能が搭載されています。
Cleer+のホーム画面は以下の通りで、黒を基調とした画面で高級感があってなかなかカッコいいと思います。

ホーム画面にイヤホン本体のバッテリ―残量は表示されますが、充電ケースが非表示なのとボリュームコントロールが無いのは少し残念。
また、アプリで出来ることは以下の通りであり、けっして多機能な仕様ではありません。
Cleer+で出来ること
✓ANC、アンビエントモードへの切り替え
✓イコライザー
✓サウンドのプロファイリング
✓タッチセンサーカスタマイズ
✓音声アシスタント起動 ON/OFF
ALLY PLUS 2サウンドカスタマイズ
ALLY PLUS 2は、ユーザーの聴力を測定して最適なリスニングを提供するHearing ID機能を備えています。
Hearing IDはアプリホーム画面の「サウンドをカスタマイズする」を選択して、聴力測定を実施して設定を行います。

実際にパーソナライズする前と後では、パーソナライズ後のほうが解像度が上がったように感じましたので、購入後は真っ先にサウンドのカスタマイズを行うことをおススメします。
ALLY PLUS 2タッチパッドカスタマイズ
ALLY PLUS 2はタッチパッドのカスタマイズが可能ですが、カスタマイズの自由度はそれほど高くありません。
タッチパッドのカスタマイズはアプリの設定メニューから行います。

左右それぞれのタッチパッドについて、2回タッチで外音コントロール、もしくは2回・3回タッチに曲送り・曲戻しのいずれかを割当てることしかできません。
1回タッチはコンテンツの再生・停止でこれは変更できないので、結局外音コントロールと曲送り・曲戻しを左右どちらに割り振るかを決めるだけ。
基本操作はカバーされているので不便に感じることはないかもしれませんが、個人的には誤作動防止のためにタッチ1回には何も割当てたくないんですよね。
このあたり、もう少し使い勝手が良くなるようファームウェアのバージョンアップで対応をお願いしたいところです。
Cleer ALLY PLUS 2の機能
ALLY PLUS 2の機能面についてチェックしてみましょう。
ALLY PLUS 2はaptX™ Adaptiveに対応
ALLY PLUS 2はaptX™ Adaptiveに対応しています。
aptX™ Adaptiveは可変コーデックと呼ばれるもので、コンテンツの種類や接続環境に応じてコンテンツを転送するビットレートを自動的に変更してくれるコーデック。
つまり、動画やゲームなどのコンテンツは低遅延を、音楽の場合は音質を優先しつつ接続環境にも対応するという優れものなんですね。
イヤホンを接続するスマホなどのデバイス側も同じコーデックに対応している必要があり、残念ながらiPhoneやiPadはaptX™ Adaptiveには対応していません。
しかし、Android端末の比較的新しい機種ならaptX™ Adaptiveに対応している可能性が高く、そのようなデバイスを使用しているユーザーならALLY PLUS 2のポテンシャルを最大限活用することが可能です。
ALLY PLUS 2は高音質の完全ワイヤレスイヤホンなので、とくに良い音で音楽を楽しみたいと思っている方でaptX™ Adaptive対応のスマホを持っている方にはおススメですよ。
ALLY PLUS 2はワイヤレス充電に対応
ALLY PLUS 2はQi規格のワイヤレス充電に対応しています。
ワイヤレスイヤホンは、有線イヤホンに比べて使い勝手は格段に良いものの、唯一充電だけが面倒というデメリットがあります。
ほとんどの製品には短いUSB-Cケーブルが付属していますが、充電のたびにケーブルを抜き差しするのは結構面倒なんですよね。
ALLY PLUS 2はワイヤレス充電に対応しているので、そうした面倒を感じなくて済みますし、イヤホン本体で約11時間、充電ケース込みで約33時間のスタミナバッテリーを搭載しています。
自宅かオフィスのどちらかのデスクにワイヤレス充電器を置いて、充電ケースを常に充電しておけばバッテリー切れになることも無いでしょう。
Cleer ALLY PLUS 2のレビューまとめ
それでは最後にALLY PLUS 2の総合評価と、良い点・改善してほしい点を整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | クリアな音声、周辺ノイズもかなり抑制 | 4.7 |
| 低音 | かなりタイトで厚みがある | 4.3 |
| 中音 | クリアで聴き疲れの無い中音 | 4.5 |
| 高音 | 解像度が高くさわやかな印象 | 4.7 |
| ANC | 電車内の走行音はしっかりカット | 4.5 |
| 外音取込み | レベル設定可能で違和感のない外音 | 4.6 |
| アプリ機能 | カスタマイズ性に乏しい | 4.0 |
| 機能加点 | HearingID搭載 | 5.0 |
| 機能加点 | aptX™ Adaptiveに対応 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.6 | |
✓ビジネスにも積極的に利用可能な通話品質
✓全音域に厚みが感じられるフラットな音質
✓必要十分なANC性能と強度の自動調整機能搭載
✓自然な外音取り込み性能
✓サウンドのパーソナライズが可能
✓aptX™ Adaptiveに対応
✓Qi規格のワイヤレス充電に対応
✓5種類程度のプリセットイコライザーは欲しい
✓アプリホーム画面の充電ケースバッテリー残量表示
✓タッチパッドのカスタマイズ性向上
今回は、ALLY PLUS 2のレビューを行ってきました。
ALLY PLUS 2はブランドとしてはあまり知られていませんが、通話品質と音質という完全ワイヤレスイヤホンの最も大切な2つの要素に関しては価格以上のポテンシャルを持った製品です。
実際使ってみて、こんなに良いイヤホンがまだあったのかと正直驚きました。
とくに通話品質が驚くほど高く、個人的な感想ではJabra以上のクオリティではないかと感じています。
またANCについても、乗り物での移動や街中で使うぶんには必要十分なレベルに達していて、周辺環境に応じてノイキャン強度を自動で調整するスマート機能まで搭載されています。
アプリ機能が限定的なのがデメリットではありますが、必要最低限のメニューは実装されていますし、なによりイヤホン本体のポテンシャルが高いので許容範囲だと整理できるでしょう。
ALLY PLUS 2は「Cleerから今後リリースされるイヤホンからは目が離せない」と感じさせてくれるほど完成度の高い製品でした。
2022年の前半で良い製品に出会えたことをうれしく感じています。
















