Beoplay EXは、デンマークの高級オーディオメーカーBang&Olufsen(B&O)から2022年4月22日にリリースされたステムデザインの完全ワイヤレスイヤホンです。
B&Oは2021年7月に同社初のアクティブノイズキャンセリング機能を搭載したカナル型のBeoplay EQをリリースしていますが、Beoplay EXはそれとほぼ同じ価格。
ただし、Beoplay EXはドライバーが9.2㎜と大径化(Beoplay EQは6.8㎜)したことと、IP57(Beoplay EQはIP54)と防水性能が大きく向上しています。
実際に使ってみると、中~高音の透明感のあるクリアサウンドは健在なまま、ドライバー径の大型化にともないBeoplay EQより低音の量感がアップ。
防水性能が上がったことでワークアウトでの使い勝手も大きく改善し、通話品質も非常に良く、ビジネスシーンでも積極的に使いたくなるイヤホンに仕上がっています。
価格的にはかなり高級なイヤホンではありますが、ガジェットとしてのデザイン性も高いことから、落ち着いた大人におススメしたくなる1台です。
今回はそんなBeoplay EXを徹底的にレビューしていきたいと思います。

Contents
Beoplay EXの通話品質と音質
B&O Beoplay EXの通話品質と音質をチェックしていきましょう。
Beoplay EXの通話品質
Beoplay EXは片側3×2の合計6基のマイクを搭載しています。
クリアな音声を実現するために、口元に近いスティック部分に6基のマイクを配置しており、自分の声とほかの音を判別するビームフォーミング技術も採用されているとのこと。
これは通話品質に期待できそうだということで、さっそく夕方のカフェでマイクテストを実施してみました。
店内はほぼ満席状態でBGMも流れていてかなり厳しい環境下ではありましたが、そのほうがマイクテストを通じた実力測定には向いているのでむしろ好都合。
【Beoplay EX 通話品質】
マイクテストの結果から、Beoplay EXは非常に高い通話品質であり、現段階でトップクラスに位置するマイク性能だということがお分かりいただけると思います。
なんというかBeoplay EXでの通話は、機械を通した音というより生の声を聴いているかのようなクオリティだと感じました。
自分の声にしっかりフォーカスできているのは、スティック部に6基のマイクを配置した効果が発揮されているように感じます。
また、マイクテストを実施した環境からはもっと多くの周辺ノイズが録音されるものと覚悟していたんですが、低域ノイズを中心にビームフォーミングも効いていますね。

これならビジネス通話やリモートミーティングなどにも積極的に使っていける通話品質だと思いますし、むしろ通話用に1台持っていてもいいなと感じるほどです。
Beoplay EXの音質
Beoplay EXはとにかくクリアなサウンドが特長で、とくに中音~高音はガラスのように透明度の高い音質です。
いっぽう低音はデフォルトのままだとすこしおとなしい感じがしますが、イコライザーで低音寄りにすこし振ってみると様子が一変します。
ぐっと沈み込んでから身体の芯にドンッとくるエネルギッシュな低音が顔を出す感じで、しかもタイトで分離感も高いので解像度の高い中高音を邪魔することもありません。
Beoplay EXは9.2㎜のネオジウムドライバーを搭載しているので、低音のボリューム感が増しているのもうなずけますね。

全体的に透き通るようなきれいな音質でありながら、低音~高音までひとつひとつの音に存在感が感じられるため、臨場感の高いサウンドを楽しめるイヤホンだと感じます。
音場は横・縦方向ともに広く、上方向の抜けも非常に良いので、厚みのある低音域と中~高音域の繊細な表現力と相まってどんなジャンルの音楽も楽しむことができると思います。

イコライザーは5種類のプリセットに加え完全カスタマイズも可能になっており、カスタマイズはメニュー右下の丸いマークをタップします。
カスタマイズイコライザーはB&O定番の直感的なデザインで、デフォルトでは円の中心にあるドットを上下左右に動かすと音質が変化するようになっています。

個人的にはエネルギー側に寄せて少しだけ低音を強調するセッティングがベストマッチで、Beoplay EXの透明度の高い音質を損なうことなく、低音~高音までバランスよく鳴ってくれる感じがします。
Beoplay EXのANCと外音取り込み性能
Beoplay EXのアクティブノイズキャンセリング(=ANC)性能と外音取り込み性能について確認していきましょう。
Beoplay EXのANC性能
Beoplay EXのANCは、周辺環境に応じて最適なノイキャン強度を自動的に選択してくれるアダプティブANCと、自分で強度を調整するマニュアルの2種類が搭載されています。

アダプティブANCかマニュアルかは専用アプリのホーム画面から選択できるようになっていて、上の画像のようにアダプティブANCのON/OFFで切り替えを行います。
マニュアル選択時のノイキャン強度はかなり細かく設定することができますが、最強レベルにしてもほどほどの効きといったところで、人の話し声などの高域ノイズは結構聞こえてきます。
マイルドなノイキャンというほどではありませんが、SONY WF-1000XM4など強力なノイキャンを売りにしている機種に比べると少し弱めといったところでしょうか。
もともとヨーロッパのオーディオメーカーは、強力なノイキャンによる音質の変化を嫌う傾向にあり、Beoplay EXもその思想を踏襲している感じですね。
ただし、低域ノイズにはそれなりに効果が感じられましたので、あまり強力なノイキャンは苦手という方にはこのくらいのANC性能がちょうど良いかもしれません。
Beoplay EXの外音取り込み性能
Beoplay EXの外音取り込みは「透過モード」と呼ばれ、ANC同様に専用アプリで取り込みレベルを調整することができるようになっています。

透過モードは全音域というよりは高域を中心に取り込んでいる感じがあり、取り込みレベルを最大値にすると高域ノイズまで耳に流れ込んでくるような気がします。
個人的には取り込みレベルを中間くらいにすると周囲の音が最も自然に聴こえ、そこから外れると聴こえずらかったり高域ノイズが気になったりで調整が難しいなと感じました。
自分はコンビニのレジなどで使うくらいなので特に不便は感じませんが、外音取り込みモードを多用するユーザーは一度実機を試してみることをおススメします。
Beoplay EXのデザインと装着感
Beoplay EXの充電ケースやイヤホン本体などのデザイン性と、実際の装着感についてチェックしていきましょう。
Beoplay EXのデザイン
Beoplay EXはB&Oらしい高級感にあふれたデザインになっています。
まず充電ケースですが、アルマイト加工されたアルミニウムケースは、Beoplay EQ同様にガジェットとしての所有欲を満たしてくれる存在感があります。

ケースを開けるとハウジング部分はマットになっていますが、イヤホン本体のフェイスプレートに強化ガラスが採用されていることもあり程よいアクセントになっています。
イヤホン本体も全体的にはマットカラーながら、タッチセンサー部のガラス素材が高級感を演出していますね。

カラーバリエーションは3色で、それぞれ発売時期が異なります。
このブログでご紹介したAnthracite Oxygenは発売済ですが、Gold Toneは2022年5月12日、Black Anthraciteは2022年6月2日に発売予定。

Anthracite Oxygenも十分カッコいいんですが、Gold ToneとBlack Anthraciteも捨てがたい…。
とくにGold Toneは充電ケースも本体もアクセサリーのようなデザイン性の高さなので、女性ユーザーにもおススメのイヤホンだと思いますよ。
Beoplay EXの装着感
Beoplay EXはステムデザイン(うどん型)のイヤホンとしては、比較的しっかりした装着感となっています。
通常、ステムデザインのイヤホンは着け心地の軽さに特徴がありますが、9.2㎜の大径ドライバーを採用しているからかBeoplay EXの装着感に軽さは感じられません。
とはいえカナル型ほどガチッした装着感というわけではなく、ステムデザインのイヤホンとしては比較的存在感のある着け心地といったところでしょう。

ステムデザインのイヤホンは装着感の軽さゆえ、油断するとポロっと落っこちてしまうように感じる製品もありますが、Beoplay EXにそういった不安感はありませんね。
なお遮音性はかなり高く、装着すると周辺ノイズはかなりカットされる印象です。
スティック部分を少し前に傾斜させるように装着すると遮音性がより高まる気がしますので、そういった意味でもカナル型イヤホンに近い着け心地ではないかと思います。
Beoplay EXの操作性と機能
Beoplay EXのイヤホン本体の操作性と便利な機能について確認していきましょう。
Beoplay EXの操作性
Beoplay EXには専用アプリ「Bang&Olufsen a/s」が用意されています。
あまり多機能なアプリではありませんが、モード変更やイコライザーなどはここから操作を行うことになります。
アプリホーム画面は以下の通りで、充電ケースのバッテリ―残量が確認できたり、音量の調整ができるのはありがたいですね。

また、Beoplay EXはフェイスプレート部分がタッチセンサーになっていて、イヤホン本体でモード変更など様々な操作をすることが可能です。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回タッチ | ノイズキャンセリング ⇒ 外音取り込み ⇒ ニュートラル | 音楽再生/停止 |
| 2回タッチ | 前の曲に戻る | 次の曲にスキップ | |
| 長押し | ボリュームダウン | ボリュームアップ | |
| 通話 | 1回タッチ | - | 受話 |
| 2回タッチ | - | 切断 | |
タッチセンサーのカスタマイズはできないため、デフォルトのまま使うしかないのが少し残念ですね。
また、できればイヤホン本体でマイクミュートの操作ができれば便利なのですが、このあたりは是非ファームウェアのアップデートで対応して欲しいところです。
Beoplay EXはマルチポイントに対応
Beoplay EXは同時に2台のデバイスに接続ができるマルチポイントに対応しています。

いまやマルチポイントは、完全ワイヤレスイヤホンに必須といっても過言ではなく、とくに仕事とプライベートのスマホ2台持ちのユーザーにはおススメしたい機能です。
たとえばプライベートスマホで音楽を聴いているときに仕事用のスマホに着信があれば、イヤホンを操作するだけで電話を受けることができます。
もちろん着信を受ければ再生中の音楽は自動で停止し、通話を終了すれば自動的に音楽が再生されるという優れもの。
もちろんパソコンとスマホ、スマホとタブレットなど、同時接続するデバイスは任意の2台を選択することが可能です。
個人的には通勤時にプライベートと仕事用のスマホを同時接続しておけるのがとても便利に感じています。
マルチポイント機能の無いイヤホンを使っていた頃は、電車の中でプライベートスマホで音楽を聴いたり動画を見たりしていても、常に仕事用のスマホを気にしていました。
カバンの中に仕事用スマホを入れて音楽を聴いたり動画を見たりしていると着信があっても気付かないので、仕事用のスマホはいつも胸ポケットに入れていましたからね。
でも、マルチポイント機能を搭載したイヤホンを使うようになってから、通勤時に仕事用のスマホはカバンの中に入れっぱなしで、全く気にならなくなりました。
着信があればイヤホンを通してわかるという安心感があり、以前より仕事用のスマホを意識せずに済んでいるので、知らず知らずのうちに感じていた精神的な負担も軽減されているんだと思います。
まさにマルチポイントさまさまですね。
Beoplay EXはaptX™ Adaptiveに対応
Beoplay EXはaptX™ Adaptiveに対応しています。
aptX™ AdaptiveはBluetooth接続環境の電波状況やコンテンツに応じて転送時のビットレートを可変させることで、安定して遅延の少ないリスニングを可能とするもの。
つまり、自宅など接続環境が良い場所で音楽を聴くなら音質優先、動画やゲームなどでは低遅延優先でデータ伝送を行ってくれる優れもののコーデックなんですね。
aptX™ Adaptiveは24bit、96kHzで伝送可能なハイレゾ対応になっているので、Beoplay EXの透明感のある繊細な音質を十分に引き出すことができる仕様だといえるでしょう。
また、レイテンシ(遅延)も50~80msと低遅延に特化したaptX LLの40msに次ぐ性能になっていますので、動画やゲームも比較的ストレスなく楽しむことができます。
参考までに現在主流になっているコーデックをまとめると、以下の表のとおりです。
| コーデック | 音質と特長 | 量子化ビット数/サンプリング周波数 | ビットレート | 遅延 |
|---|---|---|---|---|
| SBC | Bluetoothを搭載した機器は必ず対応している。SBCの音質を★と仮置きして他のコーデックと比較してみます。 | 16bit/48KHz | 64kbps~328kbps | 0.22秒前後 |
| AAC | 音質は★★。iPhoneやiPadのコーデックはAACが優先され、AACが使えない場合はSBCで接続される。 | 16bit/48KHz | 詳細は非公開につき推定値 128kbps 256kbps(可変) 328kbps | 0.12秒前後 |
| aptX™ | 音質は★★。米Qualbommが開発したAndroid端末の標準仕様。AACと体感上の差はない。 | 16bit/48KHz | 352kbps@44.1kHz 384kbps@48kHz | 0.07秒前後 |
| aptX™ LL | 音質は★★。低遅延に特化したaptXのコーデックで、音ゲーやバトルゲームに最適。 | 16bit/48KHz | 352kbps@44.1kHz 384kbps@48kHz | 0.04秒前後 |
| aptX™ HD | 音質は★★★。aptXの高音質版コーデック。ビットレートを高め遅延を犠牲にした音楽用コーデック。 | 24bit/48KHz | 529kbps@44.1kHz 576kbps@48kHz | 0.13秒前後 |
| aptX™ Adaptive | 音質は★★★★。接続環境やアプリに応じてビットレートを自動で変化させるコーデック。今後主流になる可能性大。 | 24bit/96KHz | 276kbps~620kbps | 0.05秒~0.08秒程度 |
| LDAC | 音質は★★★★。SONY独自の超音質特化型コーデック。遅延が大きいためゲームや動画視聴には向かない。 | 24bit/96KHz | 330kbps/660kbps/990kbps | 1秒以上 |
なおiPhoneはSBCとAACにしか対応していないため、より高音質・低遅延を求めるならAndroid端末への変更を検討することをおススメします。
Beoplay EXの防塵防水性能
Beoplay EXはIP57の防塵・防錆性能を備えています。
IP(=International Protection)は2003年に国際電気標準会議によって定められた防塵・防水性能を表す規格のこと。
IPに続く2つの数字のうち、前の数字が防塵等級、後ろの数字が防水等級を表し、Xが表記されている場合は特別な対策が施されていないことを意味します。
たとえばIPX4なら、防塵については特別対策はしておらず、防水は4等級の対策をしているということになります。
Beoplay EXのIP57ですが、防塵等級5は有害な影響が発生するほどの粉塵が内部に入らないレベル、防水等級7は水深1mの環境に30分間耐えられるレベルです。
これなら雨や風を気にすることもなく、ワークアウトにも積極的に使っていけますね。
Beoplay EXレビューまとめ
それでは最後にBeopぁyEXの総合評価と、良い点・改善してほしい点を整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | オフィスなどでビジネスにも使用可能 | 4.5 |
| 低音 | タイトで量感十分 | 4.4 |
| 中音 | ガラスのようなクリアさ | 4.6 |
| 高音 | 繊細だが存在感のある高音 | 4.6 |
| ANC性能 | 低域ノイズには効果あり | 4.2 |
| 外音取込み | 高音域のみを拾うような感覚 | 4.0 |
| アプリ機能 | イコライザーとモード変更のみ | 4.2 |
| 機能加点 | マルチポイント機能搭載 | 5.0 |
| 機能加点 | aptX™ Adaptiveに対応 | 5.0 |
| 機能加点 | IP57の防塵防水性能 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.6 | |
Beoplay EXは、デンマークのオーディオメーカーであるBang&OlufsenのANC搭載機としては2機種目となる完全ワイヤレスイヤホンです。
前作のBeoplay EQとANCや外音取り込み性能など基本的な機能はほぼ同じですが、ドライバーが9.2mmと大径化したことにより低音~高音まで量感がさらに加わったように感じます。
また、Beoplay EQがIP54だったのに対し、Beoplay EXはIP57と防水性能が上がっており、よりワークアウトで使いやすい仕様になっているのも大きな変化ですね。
さらに通話品質はBeoplay EQより格段に向上しており、音質も良いイヤホンであることから聴く・話すということにおいては十分な満足感が得られる製品でしょう。
かなり高価なイヤホンではありますが、デザイン性の高さなどガジェットとしての完成度も高いことから、所有欲を満たしてくれる1台だと思います。
















