Jabraはデンマークのヘッドセットメーカーで、以前から完全ワイヤレスイヤホンの通話品質が高いことで知られていました。
コロナによるリモートワークが普及するとともに、それまで音質だけがフォーカスされていたイヤホンの通話性能が注目されるようになったことはご存知の通りです。
そんな中、音響メーカーが発売するイヤホンに比べ、通話品質が非常に高いレベルにあるJabraのEliteシリーズは瞬く間に人気ブランドとなりました。
2021年秋から新しいEliteシリーズが発売されており、これまでハイエンドモデルのElite 7シリーズとエントリーモデルのElite 3、Elite 4 Activeがリリースされています。
しかし、Elite 7シリーズは2万円オーバーと高額ですし、エントリーモデルはオーディオコーデックのAACやマルチポイントに対応しておらず、どこか中途半端だったんですよね。
そこに今回登場したElite 5は、新たにハイブリッドANCを搭載することでノイキャン性能が向上し、AACやマルチポイントにも対応と機能面はハイエンドモデル以上に思えます。
そんなわけで、これは試してみるしかないということで今回はJabra Elite 5を実際に使ってみた感想をレビューしていきます。

【良い点】
〇遮音性・装着安定性に優れたイヤホン本体
〇小型でしっかりしたつくりの充電ケース
〇通話品質はさすがJabraといえる高レベル
〇中音メイン、低・高音も厚みがある高音質
〇ノイキャン性能はシリーズ最強
〇アプリメニューが豊富
〇マルチポイントに対応
〇ワイヤレス充電・急速充電に対応
【イマイチな点】
✖ハイレゾコーデックに非対応(aptX™まで)
Contents
Jabra Elite 5のデザインと装着感
まずはJabara Elite 5のデザインと装着感についてチェックしていきましょう。
Jabra Elite 5の本体と充電ケース
Jabra Elite 5の充電ケースは、すでに発売されているElite 4 Activeとほぼ同じ26×39×64mmとコンパクトなサイズになっています。
デザイン自体、前モデルのElite 75tや85tと同じですが、個人的には「これがJabraだよなぁ」となんだか安心感のようなものを感じてしまいます。

充電ケースの大きさはElite 4 Activeと変わらないものの、連続再生時間はANC OFFで36時間と、Elite 7シリーズと比べて2割アップしているのは嬉しいところです。
イヤホン本体はElite 3とほぼ同じ形状・大きさで、ELite 7 ProやActiveが丸みを帯びた形状であるのに対し、少し平たい三角形となっています。

かなり小さいボディですが、三角形の辺の長い部分のおかげで充電ケースへの出し入れや装着時に指でつまみやすいということを感じました。
全体的に非常にコンパクトなつくりで、充電ケースはシャツのやパンツのポケットに入れて持ち歩いてもさほど邪魔にならない大きさです。
カラーバリエーションはチタンブラックとゴールドベージュ、ブラックの3色展開。

ちなみにブラックはJabraストアとAmazon限定カラーとなっています。
Elite 5の販売数が伸びれば、Elite 5 Activeが発売されネイビーやミントもラインナップに加わるかもしれませんね。
Jabra Elite 5の装着感
Jabra Elite 5は非常に装着安定性が高く、それでいて圧迫感を感じさせない装着感となっています。
この小さなイヤホンはとにかく耳へのフィット感が良く、何万人もの耳の形状を検証したデータに基づき設計されただけのことはあると思います。
遮音性も非常に高く、装着すると周囲の人の声など高域ノイズがかなりカットされるのがわかります。
イヤホン本体が非常にコンパクトなので、耳孔をふさぐ以外に耳の余計なところと干渉することがなく、長時間の使用でも痛みを感じることがないのも大きなメリットですね。
Jabra Elite 5なら、耳の小さな女性ユーザーでも違和感なく装着できるでしょう。
完全ワイヤレスイヤホンにおいて、個人的に小ささは正義だと思っているんですが、Jabra Elite 5はまさにそれを実現している製品だということを強く感じます。
Jabra Elite 5の音質と通話品質
Jabra Elite 5の音質と通話品質を確認していきましょう。
Jabra Elite 5の音質
Jabra Elite 5は、ボーカルを中心とする中音域がグッと前に出てくるいわゆるかまぼこ型だと感じました。
しかし、低音や高音が弱いというわけではなく、低音のアタック感もしっかりありますし、高音の伸びやかさも十分感じられます。
音場も6mmスピーカーとは思えないほど広がりがあり、高音域もしなやかに伸びていくという気持ち良さがあります。
整理すると、中音域がメインですが、重低音と超高音はそれなりにしっかり鳴っていて、低音と高音が少し控えめな以下のような音質ということですね。

高価格帯のイヤホンで感じられる透き通るような繊細さといったものには及ばないものの、解像度・分離感などもスタンダードモデルとしては非常に高いレベルにあります。
Jabraの新しいElite シリーズは全て6mmスピーカーを採用しているので、Elite 5のサウンドは7 Proなどと比べても本質的な音質は遜色ないと思いますね。
Elite 7 Proや7 Activeのほうがより低音のクセがない音質のようにも思いますが、Elite 5も専用アプリのイコライザーを使えば自分好みのサウンドに変更することが可能です。

個人的にはプリセットの「音声」が一番好みに合っているように思いました。
Jabra Elite 5はハイレゾコーデックのaptX™ AdaptiveやLDACには対応していないので、ハイレゾで音楽を楽しみたいというユーザーには向きません。
ただ、iPhoneのように接続するスマホなどのデバイス自体がLDACやaptX™ Adaptiveなどのハイレゾコーデックに対応していないのなら、これで十分といえる音質の良さです。
Jabra Elite 5のマイク性能
Jabra Elite 5は左右にそれぞれ3つずつ、合計6つのマイクを内蔵した6-マイクテクノジーが採用されています。
もともと通話品質には定評があるJabraですから、Elite 5の実力にも期待が持てるはずということで実機を使ったマイクテストを実施してみました。
マイクテストを実施した場所は夕方のカフェで、着席率70%程度でBGMも流れているかなりシビアな状態です。
【Jabra Elite 5 マイクテスト】
マイクテストの結果はさすがJabraというもので、自分の声がハッキリ聴こえることはもちろん、BGMや周囲の人の話し声をかなりカットしてくれていることがわかります。
とくにサ行の刺さりやこもったような感じもなく、通話品質は非常に高いレベルにあるといえるでしょう。

これだけの通話品質であれば、在宅時はもちろんオフィスからのリモートミーティング参加時にも使えますし、カフェでのビジネス通話でも相手に不快感を与えることはないでしょう。
なお、Elite 5では通話中にアプリホーム画面の上部に全ての通話設定を表示させることができます。
通常のアプリ画面は、音楽などのコンテンツ再生時に操作しやすいデザインになっていますが、通話時に通話用のデザインに変るというのはJabraらしい配慮ですね。
Jabra Elite 5のANCと外音取り込み性能
Jabra Elite 5のアクティブノイズキャンセリングと外音取り込み性能をチェックしていきましょう。
Jabra Elite 5のANC性能
Jabra Elite 5は、新しいEliteシリーズとしては初のハイブリッドANCを搭載しています。
アクティブノイズキャンセリング(=ANC)にはフィードフォワード方式とフィードバック方式があり、その両方を搭載したものがハイブリッドANCと呼ばれています。
【フィードフォワード方式】
イヤホンの外側にマイクを配置して周囲のノイズを集音し、そのノイズと逆位相の音波を電気的に作り出して音楽と一緒にイヤホンに流す技術。
【ハイブリッド方式】
イヤホンの内側に配置したマイクで外部から侵入してくるノイズと音楽をいったん集音し、ノイズ成分を抽出したうえでそれと逆位相の音波を流すフィードバック方式とフィードフォワード方式の2つの技術を搭載したもの。
ハイブリッドANCはフィードフォワード方式である程度減衰されたノイズを、フィードバック方式をつかって耳の近くでさらに減衰させるため、強いノイキャン効果が得られます。
実際にElite 5のANCを試してみましたが、やはり上位モデルのElite 7シリーズよりもノイキャンの効きは上だと感じました。
高域ノイズはそれほどカットしてくれませんが、低域~中域にかけてのノイズはかなりしっかり押さえこんでくれます。
電車内の走行音や空調のモーター音などはほぼ邪魔にならないくらいの効果が認められましたので、通勤や通学の電車内などで音楽や動画を楽しむには十分な性能でしょう。
なお、Elite 5は専用アプリからANCのパーソナライズができるようになっています。

上の画像のようにノイズの特性だけでなく、左右のANCの効きき具合も調整できる機能が搭載されていることには大きなメリットを感じました。
個人的にノイキャンが左右均等に効いていないような気がすることは結構な頻度であるんですが、どうにも違和感が大きい時は左右のイヤーピースの大きさを変えて調整しています。
とはいえイヤーピースの交換って電車やバスの中だとなかなか面倒なので、アプリで左右のノイキャンの効き具合を調整できるのはとても便利だと感じています。
また、ノイキャン強度もアプリで5段階に調整可能。

なお、Jabra Elite5も含めて、ノイズキャンセリング機能が優秀なイヤホンのランキング記事もありますので、よろしければご覧下さい。
Jabra Elite 5の外音取り込み性能
Jabra Elite 5の外音取り込み(HearThrough)は、イヤホンを着けていないというほど自然な感じではありませんが、実用的には十分な性能だと思います。
HearThroughもノイズキャンセリング同様、アプリメニューから周囲の音をどのくらい取り込むかを調整することができるようになっています。

HearThroughはあまりレベルを上げすぎると、中音域を中心に必要以上に集音したような聴こえ方をするので、こちらはできるだけレベルを下げて使ったほうが良いと思います。
なお、HearThrough利用時に再生中の音楽をそのまま流し続けるか、ミュートにするかの設定が専用アプリで出来るようになっています。

専用アプリJabra Sound+
Jabra Elite 5の専用アプリについて、どのような機能があるのかみていきましょう。
アプリホーム画面とメニュー
Jabra Elite 5はEliteシリーズ共有アプリの「Jabra Sound+」を使うことができます。

Jabra Sound+はイヤホンのグレードによって使える機能に制限がありますが、Elite 5にはほぼすべての機能が解放されています。
- ✓ANCのパーソナライズとレベル調整
- ✓HearThroughの強度調整
- ✓HearThrough時の再生音ミュート設定
- ✓イコライザーでの音質調整
- ✓タッチコントロールのカスタマイズ
- ✓周囲の音をかき消すサウンドスケープ
- ✓通話中自分の声を聴く側音機能
- ✓Spotify TapのON/OFF切替
- ✓イヤホン着脱検出と再生停止、マイクミュート など
ANCやイコライザーについてはすでにご紹介しましたので、ここではそれ以外の主なアプリメニューについてご紹介しましょう。
タッチコントロールのカスタマイズ
Jabra Elite 5は、イヤホン本体の物理ボタンによって操作ができるようになっています。
Jabraは新しいEliteシリーズでも全モデル物理ボタンを採用していますので、これはメーカーのこだわりなんでしょうね。
物理ボタンはタッチセンサーのように意図せずさわって誤動作するということがないので、イヤホンの位置を直したりするときに気を遣わなくて良いというメリットがあります。
デフォルトの操作設定は以下の表の通りですが、専用アプリで操作をカスタマイズすることが出来るようになっています。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回押し | ヒアスルー ⇒ ANC ⇒ OFF切替 | 音楽再生/停止 |
| 2回押し | 音声アシスタントもしくはSportify Tapへのクイックアクセス | 次の曲にスキップ | |
| 3回押し | - | 前の曲に戻る | |
| 長押し | 音量DOWN | 音量UP | |
| 通話 | 1回押し | 受話/マイクミュートON・OFF | |
| 2回押し | 着信拒否/通話終了 | ||
| 長押し | 音量DOWN | 音量UP | |
アプリメニューの「パーソナライズ」⇒「MyControls」と進めると、メディア用(音楽再生)、着信通話中、通話中と細かくボタン操作の設定変更ができるようになっています。

たとえば音楽再生なら左右それぞれ1回~3回押しに、再生/一時停止・曲のスキップ・曲戻し・音声アシスタント起動・ANC/HearThrough切替のいずれかを任意に割り当てることができます。

通話中のカスタマイズは上の画像の通りで、通話のミュート/ミュート解除、側音のON/OFF操作がイヤホン本体でできるというのはとても便利に感じますね。
なお、サウンドモードについてはANC、HearThrough、オフのうち、どのモードを入れ替えるかを3パターンの中から選択できるようになっています

通話中に自分の声を聴く側音機能
Jabra Elite 5には、通話中に自分の話している声を聴くことができる「側音」というアプリメニューが搭載されています。
完全ワイヤレスイヤホンは、装着すると耳栓効果で通話中の自分の声が聴こえずらくなります。
人間って不思議なもので、イヤホンを着けているから自分の声は聴こえずらいって分かっていても、声が小さいと勘違いしてついつい大声で話してしまうんですよね。
会社のオフィスなどでも完全ワイヤレスイヤホンを使っている人が増えつつあると思うんですが、「なんか大声で話してるな…」なんて時はだいたいイヤホン着けてるケースです。
Jabra Elite 5は装着時の遮音性が高いイヤホンですので、当然自分の声もかなり聴こえずらいので、側音機能はとても重宝します。

側音機能は専用アプリでON/OFFの設定ができるほか、自分の声をどれだけ取り込むかのレベル設定もできるようになっています。
このあたりの通話に関する細やかな機能は、通話に定評があるJabraならではと感心するポイント。
側音機能を上手に活用すれば、オフィスで大声で会話をして他人に迷惑をかけて恥ずかしい思いをするということもないでしょう。
Jabra Elite 5の機能
Jabra Elite 5はアプリだけでなくハード面でも様々な便利機能が搭載されています。
Jabra Elite 5はマルチポイント対応
Jabra Elite 5は2台のデバイスを同時に接続しておけるマルチポイントに対応しています。

Jabraといえばマルチポイントが最大の魅力だったんですが、Elite 3とElite 4 Activeにはこの機能は非搭載だったんですよね。
いまだに前モデルのElite 75tがそこそこ売れているのはマルチポイントを搭載しているからで、新しいEliteシリーズはコーデックの問題など「なんか中途半端だな…」と感じていました。
その点、Elite 5はマルチポイントが搭載されていますので、機能的にはElite 7シリーズと遜色のない仕様、いやそれ以上になったのではないかと思います。
マルチポイントはとても便利な機能で、一度これに慣れるともう後戻りできないほどのメリットが感じられるんですよね。
たとえば通勤時にビジネス用のスマホをバッグの中に入れてプライベートスマホで動画を観ていたとします。
そんなときにビジネス用のスマホに着信があればイヤホンに着信音が流れ、イヤホン本体を操作すれば着信に応答することができます。
通話中はコンテンツが自動的に一時停止され、通話が終了すると再開されるので、いっさいスマホに触る必要がありません。
もちろんスマホとパソコン、タブレットとパソコンなど、Bluetooth接続可能なデバイスならどんな組み合わせでも2台同時に接続することが可能です。
日常的に2台のデバイスを使っているというユーザーは、Jabara Elite 5でマルチポイントの便利さを是非体感して頂きたいと思います。
ワイヤレス充電と急速充電に対応
Jabra Elite 5はワイヤレス充電と急速充電に対応しています。

Qi規格のワイヤレス充電器は別途市販のものを購入する必要がありますが、充電のたびにUSB-Cケーブルを取り出す手間を考えるとワイヤレス充電のほうが圧倒的に楽ですね。
また、充電器の上に置いておくだけで常に満充電の状態を保つことができますので、イヤホンを使っている最中にうっかりバッテリー切れを起こすこともなくなります。
10分の充電で約1時間の音楽再生が可能な急速充電も、使い勝手という点では大きなメリットが感じられるポイント。
左右両方のイヤホンを使ってリモートミーティングに参加している時などで、バッテリーローの状態になっても片方のイヤホンを充電器に戻して交互に使えばバッテリー切れになることはありません。
Jabra Elite 5のレビューまとめ
それでは最後にJabraElite 5の総合評価を整理したうえで、今回のレビューを通じた感じた点を記載します。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | オフィスやカフェでのビジネスにも使用可能 | 4.7 |
| 低音 | 曲を下支えする量感は十分 | 4.5 |
| 中音 | クリアなボーカルが一歩前に出てくる | 4.8 |
| 高音 | 伸びやかに鳴るが少し控えめ | 4.6 |
| ANC性能 | 低中域ノイズには十分効果あり | 4.5 |
| 外音取込み | 自然さは今一歩だが実用性は十分 | 4.2 |
| アプリ機能 | 機能面・操作性ともに文句なし | 5.0 |
| 機能加点 | マルチポイントに対応 | 5.0 |
| 総合評価 | 4.7 | |
Jabra Elite 5を実際に使ってみて感じたことは、現行のEliteシリーズの中で最もおススメできる製品だということです。
https://monolowl.com/jabra-elite-series-comparison-2022-09-23
Elite 5がハイブリッドANCを採用したことで、上位モデルのElite 7 ProやElite 7 Activeよりノイキャン性能が上がっていますし、マルチポイントも搭載しています。
通話品質や音質、アプリ機能などもElite 7シリーズと比べてもそう劣るところがあるとは感じられませんでした。
バッテリー性能も従来品の1.2倍程度パワーアップしていますし、急速充電とワイヤレス充電にも対応しています。
Elite 5をスタンダードモデルとするのであれば、Elite 7シリーズはハイレゾコーデックへの対応や音響構造の変更など高音質化をはかる必要があるのではないかと感じます。
1ユーザーが偉そうな意見を述べてしまいましたが、それくらいJabra Elite 5はパッケージとして良く出来ているということ。
2022年9月時点でJabraの完全ワイヤレスイヤホンを検討するなら、まちがいなくElite 5の購入をおススメします。
















