有線イヤホン並みの音質を実現
EAH-AZ70Wはテクニクスが2019年秋に発売して衝撃を与えた高級イヤホン、EAH-TZ700の開発で培った技術をふんだんに取込んだ完全ワイヤレスイヤホンです。
特に中音~高音域の解像度が高く音質もフラットで、音場の広がりもクラス最高性能といっても過言ではありません。
また、送話の音声とそれ以外の音を区別してノイズを低減するビームフォーミングも搭載しており、通話品質も合格点が付けられます。
完全ワイヤレスイヤホンもここまできたかと思わせる、ぜひ手に取って頂きたい1台です。

Contents
EAH-AZ70Wの通話品質と音質をチェック
まずは、最も気になる通話品質と音質をチェックしていきましょう。
EAH-AZ70Wのマイク性能
EAH-AZ70Wの通話性能は、2万円オーバーの完全ワイヤレスイヤホンの中ではかなり優秀な部類です。
このクラスでもっとも通話品質が高いのは間違いなくJabra Elite 85tですが、EAH-AZ70Wはそれに次ぐ性能を有しているというのがマイクテストの印象です。
以下はシェアオフィスでマイクテストを行ったもので、周囲の席はある程度埋まっていて、電話をしている方もいました。
【Technics EAH-AZ70W マイクテスト】
声がこもるような聞こえ方はしませんし、マイクとの距離感も「もっとマイクに近づいて!」と言いたくなる印象も全くないですね。
高めのノイズは拾っているものの、TWSのマイク性能としては十分合格点だと思います。
EAH-AZ70Wにはビームフォーミングと呼ばれる、音声とそれ以外の音を区別してノイズを低減する技術が搭載されていますが、これがある程度機能しているのでしょう。
この製品は2020年4月に発売され、その後5回のファームウェア・アップデートを行っています。
最新のアップデートでは通話時のフィルター改善が行われており、小声でも通常の音量と同じように高音域までしっかり相手に伝わるようにチューニングが施されました。
それが効いているのかもしれませんが、「EAH-AZ70Wのマイクは全く使い物にならない」といった発売直後のレビューを読んでいた僕としては、「いやいや、かなりいい部類でしょ」と突っ込みを入れたくなりました。
EAH-AZ70Wの音質とノイズキャンセリング性能
EAH-AZ70Wの音質とノイズキャンセリング機能について個別に解説します。
EAH-AZ70Wの音質
音質については評価が高いEAH-AZ70Wですが、試聴した結果は「なるほど…これは確かに良いわ!」でした。
さすがEAH-TZ700に型番を寄せてきただけあって、Technicsの意地みたいなものを感じてしまったのは僕だけでしょうか?
ドラム・ベース・ギター・ボーカルの1つ1つの音がクリアに聴こえ、特に中音~高音域の解像度は圧巻のひと言に尽きます。
「こんな音が鳴っていたんだ」とか「こういう歌詞だったんだ」といったことが、これまで聞いていたすべての曲で感じることができます。
低音が出ていないというレビューを目にしたりしますが、このイヤホンは耳孔にねじ込むように装着して、本体が耳に密着するようにすれば十分低音は出ていることが実感できるはずです。
むしろ変にブーストされた低音ではなく、本来の音を忠実に再現しているというべき音質です。
専用アプリのイコライザーでは2種類のプリセットと完全カスタマイズも可能ですが、大きく音質を変化させるチューニングはできません。

プリセットのバスエンハンサーだと低音が増していい感じなので普段はこの設定ですが、バラードはクリアボイスにするとボーカルにピンスポがあたったようで鳥肌ものですよ。
音場に関しては奥行きこそやや物足りない印象ですが、左右への広がりは十分出ていると感じました。
僕は特に中音~高音域の解像度が高いイヤホンが好みなので、かなり自分に合った製品だなと思いますが、解像度が高すぎるゆえに聴き疲れするという方もいるかもしれません。
このあたりは好みが分かれるところかもしれませんが、クリアな音を好むユーザーにとっては一度試聴すれば欲しくなってしまう製品であることに間違いはないでしょう。
EAH-AZ70Wのノイズキャンセリング
EAH-AZ70Wはデュアルハイブリッドノイズキャンセリングと呼ばれる機能を搭載しており、フィードフォワード方式にデジタル制御、フィードバック方式にはアナログ制御を施している。
これはイヤホン外側の騒音には大幅なノイズ低減が可能なデジタル制御を用い、イヤホン内側の耳の中のノイズ低減には処理遅延が少ないアナログ制御を用いるというもの。
正直なんのこっちゃ?という感じですが、要するにフィードフォワード方式×フィードバック方式のハイブリッドノイキャンに、さらに最適な制御をかけてノイズを低減してますよということ。
実際のノイズキャンセリング性能はどうかというと、AirPod Proを10点満点とすると、EAH-AZ70Wは9点くらい、同等に近いといった感じです。
ANC(=アクティブ・ノイズキャンセリング)をONにすると、低音~中音域のノイズはしっかり低減してくれますので、電車やバスの走行音はほぼ消えます。
ANCの強さは専用アプリで調整できますが、僕は基本的にレベルMAXで使っています。

もともとANCは高音ノイズは苦手なので、どのイヤホンでもPNC(=パッシブ・ノイズキャンセリング)で低減させるしかありません。
この点についても純正のイヤーピースでANCがイマイチだと感じる方は、市販のものを試してみてください。
僕はSpinfit CP100やCP360を装着すれば、電車内でも音楽を流してしまえば周囲のノイズはほぼ気にならないレベルまで低減できています。
EAH-AZ70Wの外観と装着感をチェック
次にEAH-AZ70Wの外観や装着感をチェックしていきましょう。
EAH-AZ70Wの本体と充電ケース
本体と充電ケースの外観は以下の通りです。
アルミ製の充電ケースは若干大き目ながら高級感のある質感で、所有欲を満たしてくれる大人っぽいデザインとなっています。

また、イヤホン本体もタッチセンサー部にはアルミ調のメッキにスピンドル加工がされていますので、装着時にも高級感が意識されたデザインに仕上がっています。
ケースもコンパクトでスーツのポケットに入れて持ち運べる大きさです。

なお、カラーバリエーションはシルバーとブラックの2色展開で、グレーやレッド系もあるとなお良いのになぁと思います。

EAH-AZ70Wの装着感
EAH-AZ70Wの装着感は、耳孔にねじ込むように装着するとかなりぴったりと耳のフィットする印象です。
ただし、耳のくぼみにはまり込むような形状をしていないので、「耳孔にねじ込むように装着」しないと前かがみになった時に落ちてしまうように感じるかもしれません。
そういった意味でも、自分に合ったイヤーピース探しが重要になるように思います。
Technicsによると、イヤホン全体をアンチトラガス(耳たぶの上の隆起している軟骨の部分)でしっかりとホールドしながら耳孔にフィットする形状にしたそうです。
また、イヤーピースも周辺部と中心部でシリコンの硬度を変えてフィット感と遮音性を両立させたとしています。
純正イヤーピースはずんぐりした形状で柔らかめのシリコンでつくられていますが、もう少し硬めが好みならAZLA SendaEarfit Short、柔らかめが好みならSpinfit CP360がおすすめです。
軸が短いと装着感に不安があるなら、Spinfit CP100やFinal Eタイプなどを試してみると良いでしょう。
EAH-AZ70Wの機能と操作性をチェック
最後にTechnics EAH-AZ70Wの機能や操作性についてみていきましょう。
EAH-AZ70Wの操作性

EAH-AZ70Wは新開発されたタッチセンサーアンテナが採用されていて、タッチセンサーの基盤部分もBluetooth®アンテナ化することによりアンテナの表面積を確保し、接続の持続性が強化されています。
また、Bluetooth®の信号を左右それぞれのイヤホンが同時に受信する左右独立受信方式を採用しているので、接続の安定性が高く、動画を視聴する際の映像と音声のずれ(いわゆる音ズレ)も軽減される仕様になっています。
タッチセンサーの感度は非常に良く、タップするたびにタップ音が高音になるため、操作が感覚的に捉えられるということはメリットだと思います。
また、発売当初はタッチセンサー設定のカスタマイズができなかったのですが、2021年2月25日のファームウェア・アップデートでアプリからのフルカスタマイズが可能になりました。
デフォルトの設定は以下の表の通りですので、直感的な操作が自分に合わない設定があれば変更してしまいましょう。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回タップ | 音楽再生/停止 | 音楽再生/停止 |
| 2回タップ | 音量DOWN | 次の曲にスキップ | |
| 3回タップ | 音量UP | 前の曲に戻る | |
| 2秒長押し | 音声アシスタント起動 | 外音取り込み ⇒ ノイズキャンセリング ⇒ OFF | |
| 通話 | 1回タップ | 受話 | 受話 |
| 2秒長押し | 着信拒否/終話 | 着信拒否/終話 | |
Technics専用アプリについて
EAH-AZ70Wは、Technics Audio Connectを使って設定変更や音質の調整が可能です。
アプリは比較的シンプルにつくられていて、「こんなことまで出来るんだ⁉」と驚くようなメニューはありませんが、必要なものは全て揃っています。

Technics Audio Connectでどんなことができるのかと、ポイントを簡単にまとめてみましたので参考にしてみてください。
| アプリメニュー | できること |
|---|---|
| 充電状態の確認 | イヤホン本体の充電状態が表示される |
| イヤホン本体の設定 | ・タッチセンサーに割り当てられた各種操作の変更 ・音声ガイダンスの言語変更(日本語の他、独・英・仏から選択可能) |
| 音質の調整 | ・2種類のサウンドモード(バスエンハンサー・クリアボイズ)が選択可能 ・イコライザーでの手動設定可能(5つのレンジで5段階調整) |
| ノイズキャンセリング | 100段階で調整可能 |
| 外音取り込み | 100段階で調整可能 |
| 音声アシスタント | 利用した音声アシスタントを設定 |
| オートパワーオフ設定 | 設定した時間無音が継続すると本体の電源を自動的でOFF |
| イヤホンを探す | スマホと本体の接続が切れてしまった場所の情報を保存 |
| ファームウェアの更新通知 | ファームウェアのアップデート |
EAH-AZ70Wのおすすめ機能
EAH-AZ70Wには、他機種には搭載されていない「できること」はありません。
この製品は、色々とできるということを目指したものではなく、限りなく音質を追求したイヤホンなので、どちらかというと「特別なこと」は技術仕様に反映されていると捉えるべきでしょう。
その最たるものはイヤホン全体の音響構造設計であり、technicsがHi-Fiオーディオ機器や超高級ステレオサイドホンEAG-TZ700の開発で培ってきた技術が詰め込まれています。
出典:technics EAH-AZ70W 公式サイト振動板にはグラフェンコートを施したPEEK振動版を採用して強度アップと振動板自体の不要な振動を抑制し、EAH-AZ70Wの特徴である高音域の伸びや抜けが表現されています。
また、ドライバー後端にはEAH-TZ700にも採用されたアコースティックコントロールチャンバーを配置して空気の流れの最適化を図り、広帯域再生能力を高めています。
まぁ、僕も音響メーカーの技術者ではないし、バリバリの文系なので難しいことはさっぱり分かりませんが、Technicsの技術者魂をヒシヒシと感じることはできます。
余計なもんはいらねぇ…音で勝負だっ!
それがEAH-AZ70Wのおすすめ機能だといえるでしょう。
まとめ
Technics初となる完全ワイヤレスイヤホンEAH-AZ70Wは、中音~高音域の解像度が非常に高く、TWSにクリアな音質を求めるユーザーには非常におすすめの製品です。
2020年のVGP技術大賞に輝いたEAH-TZ700の開発で培った技術を採用した本製品は、音楽本来の躍動感や豊かな空間性を実現したとのメーカー発表の通り、多くのユーザーから高い評価を受けています。
いっぽうで、通話品質についても平均レベル以上の仕上がりとなっており、2021年2月のファームウェア・アップデートでその性能がさらにアップ。
web会議やリモートミーティングのシーンにおいても、周辺ノイズをカットしたクリアな音声を相手に届けることができる数少ない完全ワイヤレスイヤホンの中の1台となっています。
メーカーも力を入れて開発した製品なので、2020年度のファームウェア・アップデートが5回とサポートの厚さもEAH-AZ70Wを選ぶメリットの1つにあげられます。
ナチュラルな音質にこだわるのであれば、ゼンハイザーのMOMENTUM True Wireless 2があげられますが、EAH-AZ70Wにさらに1万円弱を足さなければ手に入りません。
また、MOMENTUM True Wireless 2とマイク性能を比較すると、EAH-AZ70Wが一歩リードしていますので、仕事にも使う予定ならこちらの製品を選ぶことをおすすめします。
ちなみに約2ヵ月使用した感想も記事にしていますので、そちらも参考にどうぞ!

















