音質に定評のあるビクターから、完全ワイヤレスイヤホンのミドルレンジモデルとなるHA-FX150Tがリリースされました。
ビクタースタジオのプロエンジニアが音質チューニングに参加しており、Tuned by VICTOR STUDIOのロゴが付いたモデル。
そのロゴに恥じないだけの高音質イヤホンで、没入感の高いサウンドに仕上がっています。
また、HA-FX150Tはビクター完全ワイヤレスイヤホンとしては初の専用アプリ対応モデル。
まだまだメニューは少ないものの、これまでのモデルと比べて使い勝手は格段に向上しています。
もちろん、アクティブノイズキャンセリングや外音取り込み機能も登載していますので、Victorファンならずとも興味を惹くスペック。
そんなわけで、今回はVictor HA-FX150Tの良い点・悪い点などを本音ベースでレビューしていきます。

【良い点】
〇ビクタースタジオのプロによる音質チューニング
〇深みと伸びのあるクリアなサウンド
〇テレワークにも積極的に使える高い通話品質
〇充電ケース・イヤホン本体とも超コンパクト
〇イヤーピースがスパイラルドットPro
〇ANC ONでも音質に変化なし
〇92段階のボリュームステップ搭載
〇ゲームや動画に最適な低遅延モードを搭載
【イマイチな点】
✖マルチポイント非対応
✖ハイレゾコーデック非対応
✖タッチコントロールカスタマイズ不可
Contents
Victor HA-FX150Tのデザインと装着感
まずはビクター HA-FX150Tの充電ケースやイヤホン本体のデザインと装着感について確認していきましょう。
オーソドックスなデザイン
HA-FX150Tは今年リリースされた「Victor HA-A30T 」や「JVC HA-XC72T」のようにかなりコンパクトです。
充電ケースは手にチョコンと乗る程度の大きさで、ケース重量は30gを切るという軽さ。

とにかく軽く小さいので、シャツやジャケットのポケットにサッといれて持ち運ぶことができます。
充電ケース、イヤホン本体ともにニッパーがプリントされたビクターらしいオーソドックスなデザイン。
イヤホン本体は本当に小さく、必要最小限まで体積を絞り込んだように感じられます。

形状は太鼓型で、ノズルが比較的ストレートに伸びているタイプ。
ドライバーの背面に音響のための空間をしっかり確保したことから、イヤホン本体が若干細長い形状になっているようです。
これである程度の大きさだと装着安定性が心配になりますが、スリムで小さいため全く問題ありません。
カラーバリエーションはブラックとブロンズの2色。

ブロンズは装着時にあまり目立たないというメリットがありますので、女性にもおすすめです。
スパイラルドットで装着安定性◎
HA-FX150Tは縦に長い太鼓型の形状ではありますが、本体が小さく軽いので装着安定性は悪くありません。

ただ、イヤーピースを少し耳孔の奥までねじ込むように装着したほうが、より強い安定感が得られるイヤホンだと感じます。
イヤーピースを深く差し込むことに苦手意識がある方もいると思いますが、付属のイヤーピースで対策されています。
HA-FX150Tのイヤーピースは、ビクターのハイエンドモデルHA-FW1000Tでも使われている「JVC スパイラルドットPro」。
このイヤーピースは、非常に柔らかい素材でありながらしっかりしたホールド感があり、音の抜けも良いイヤーピースです。
また、S/MS/M/ML/Lの5種類のサイズが同梱されているので、装着時の違和感を感じにくいサイズ選びができるというメリットもあります。

スパイラルドットProは市販していないので、破損した場合は以下のいずれかを購入すれば良いでしょう。
また、「もう少し浅い着け心地のほうが…」という方は、同じスパイラルドットの以下の商品がおすすめです。
Victor HA-FX150Tの音質と通話品質
ビクター HA-FX150Tの音質と通話品質をチェックしていきましょう。
プロ監修の上質なサウンド
HA-FX150Tを初めて聞いた時に感じたことは「音楽を流した瞬間、頭の中がクリアになった」ということです。
雑味の全くない透き通った空間に音楽だけが鳴り響くような感覚で、有線のIEMを聴いた時の感じに似ています。
ここまで透明度が高い完全ワイヤレスイヤホンは久しぶりで、ビクタースタジオのプロエンジニアの監修ってすごいなと感心しました。
画像出典:ビクター製品ホームページより音質は低音~高音まで不足感はありませんが、デフォルトだと低音域の豊かさをより感じられるサウンドです。
暖かみのある低音ですが、うねる感じというか、いったん沈み込んでから立ち上がってくるイメージです。
だからといってズンズン響くような聴こえ方ではなく、柔らかく上質な低音が下支えしているという印象。
音が高くなるにつれておとなしくなる感が若干しますが、ボーカルやギターなどの中音、ピアノやシンバルなどの高音も埋もれずしっかり鳴っています。
サウンドイメージは以下の通りで、やや低音寄りのフラットな音質ですね。

なお、HA-FX150Tの大きなメリットは、ビクタースタジオエンジニアがチューニングしたサウンドモードが利用できることでしょう。
専用アプリにProfessional①~③のプリセットが用意されていて、音楽ジャンルによって変更が可能です。
| モード | 特徴・音の狙い | おすすめジャンル |
|---|---|---|
| Proffesional① | 声のリアリティ、Vocalの伝わり方を重視し、より歌詞を聴きたくなるような、唄モノでのリアルなサウンド | ボーカルをフィーチャーした楽曲 |
| Proffesional② | 音場の広がりをより感じられ、リズムのアタック感を強調した晴れやかなサウンド | JAZZ、フュージョン |
| Proffesional③ | 視界がキラッと晴れ、ボーカルの太さとバックの安定感が増した抜けの良いサウンド | 80~90年代の洋楽 |
それぞれのモードを試してみましたが、音の狙い通りにチューニングされていてかなり良い感じです。
完全カスタマイズのイコライザーは非搭載ですが、そもそもデフォルトの音質が十分満足できる仕上がり。
それに加えてビクタースタジオエンジニアのチューニングが楽しめるんですから、音楽鑑賞についてはほぼ満点だと思います。
マイクを通していないような自然な声質
HA-FX150Tは、通話用ノイズリダクションと高性能MEMSマイクでクリアな音声が実現されているとのこと。
以前、HA-A30Tのマイクテストを実施したとにはかなりレベルが高いと評価したので、今回も期待がもてます。
マイクテストは平日夕方のカフェ、着席率40%程度の比較的すいている状態で実施しました。
【Victor HA-FX150T マイクテスト】
マイクテストの結果、周囲の音は人の話し声やBGMなどをそれなりに拾ってしまっており、ノイズリダクションは標準レベルでしょう。
ただ、自分の声はマイクを通していないかのように自然に聴こえることに驚かされます。
周囲の話し声に自分の声が埋もれることはなく、マイクがしっかり発話者にフォーカスしていることがお分かりになると思います。
また、イヤホンマイクにありがちなこもったような音声になることもなく、実際の話し声に近い声質なのも評価ポイントですね。

なお、HA-FX150Tは、通話中に左イヤホンのタッチコントロール1タップで、マイクミュートのON/OFFができることも大きなメリットです。
リモートミーティングで完全ワイヤレスイヤホンを使う場合、最も多用する機能がマイクミュート。
しかし、メーカーによってはイヤホン本体でミュート操作ができなかったり、長押しや2タップなど操作が面倒なモデルも多いのが実情です。
その点、HA-FX150Tは1タップでON/OFF切替ができるので、分かりやすく操作ミスも少ないことから使い勝手が非常に良いと感じました。
Victor HA-FX150TのANCと外音取り込み性能
ビクター HA-FX150Tのアクティブノイズキャンセリング(=ANC)と外音取り込み性能を確認していきましょう。
低~中低域まで効くANC性能
HA-FX150Tのノイズキャンセリングはそれほど強力なものではなく、低域~中低域は抑制してくれますが、高域ノイズは残るレベルですね。
ただし、イヤホン本体での遮音性がかなり高いので、装着するだけで中高域~高域ノイズをそれなりにカットしてくれます。
画像出典:Victor製品ホームページよりですので、ANC自体の強度以上にノイズキャンセリングがしっかり効いている感があると感じられる仕上がりです。
この効き具合なら、電車の中でも音楽を流せばノイズはそれほど気にならないでしょう。
また、メーカーによってはノイズキャンセリングモードで低音が一気に増すものがありますが、HA-FX150Tは音質の変化がほぼありません。
このあたりはさすがビクターと思わずにいられないところ。
ノイキャン効果と音質変化の間の、ギリギリのラインでバランスをとってきたんでしょう。
この音質変化の無さは、3つのProfessionalモードをノイキャンモードでもそのまま楽しめるというメリットがあります。
せっかくのビクタースタジオ監修のチューニングが、ノイキャンで台無しになってしまうのではもったいないですからね。
そういった意味では、とにかく強いノイズキャンセリングイヤホンが欲しいという方には合わないかもしれません。
ただ、音質にこだわりたい方や、あまり強いノイズキャンセリングは苦手という方なら十分満足できるANC性能だと思います。
なお、主に通勤通学の電車内で使うので、ノイズキャンセリング性能が高いモデルが欲しいという方は以下の記事を参考にして頂けたらと思います。
標準レベルの外音取り込み性能
HA-FX150Tの外音取り込みは、イヤホンを着けてないほど自然とはいえないまでも、標準レベルに仕上がっていると感じました。
中~高音を取り込んでいるなという感覚があるので、すこし違和感があるのは事実。
ただ、変に取込んだ音が増幅されているようには感じないので、常時外音取り込みモードのまま使うのでなければ問題ないでしょう。
またHA-FX-150Tは、外音取り込みモードにすると自動的にコンテンツのボリュームを下げてくれる「タッチ&トーク」が搭載されています。
外音取込みモードにした時にコンテンツの音量がそのままだと、結局周囲の音が聴こえないといったことになりがち。
そうなるとボリュームを下げるかコンテンツを停止させるために、もう1アクションイヤホンを操作しなければなりません。
とっさに音を聴きたいときに2アクションが必要だと「なんて言ってるのか結局聴こえなかった…」ってなりやすいんです。
そういった意味では、HA-FX150Tのこの仕様はユーザビリティを満たすものだと評価できると感じました。
Victor HA-FX150Tの専用アプリ
HA-FX150Tは、ビクター完全ワイヤレスイヤホン初の専用アプリ対応モデルです。
アプリホーム画面とメニュー
ビクター完全ワイヤレスイヤホン初の専用アプリは「Victor Headphones」。
決して高機能アプリとはいえないものの、ビクターらしいメニューが搭載された仕上がりになっています。

アプリトップ画面は上の画像の通りで、左右イヤホン本体のバッテリ―残量や接続コーデックが表示されるデザイン。
各種メニューは下にスクロールしてアクセスするタイプになっています。

メニューはざっと以下の通りで、必要最低限のものは揃えられていると感じます。
- 92段階のボリュームステップ
- 通話用のボリュームステップ
- タッチ&トーク
- ノイズキャンセリングON/OFF
- インジケーター点灯抑制 ON/OFF
- ビープ音&音声プロンプト抑制 ON/OFF
- タッチキー無効 ON/OFF
- 低遅延モード ON/OFF
- 6種類サウンドモード選択
欲を言えば、タッチコントロール操作とイコライザーの完全カスタマイズができれば、言うことなしだったかなと。
このあたりはファームウェアのアップデート対応に期待したいと思いますね。
92段階のボリュームステップ
Victor Headphonesアプリで最高にうれしいのが、この92段階のボリューム調整機能。
ほとんどの方がイヤホンを接続するのはスマホだと思いますが、スマホだと細かいボリューム調整ができないんですよね。
イヤホン本体で操作をする場合はもちろんのこと、スマホ側でもそれほど細かく音量調整することはできません。
それに対して、HA-FX150Tはアプリのボリューム調整が92段階で可能。
音楽を聴いていて「もう少しだけ大きくor小さく」というボリューム調整ができるので、音の大きさにストレスを感じることがなくなります。
「ボリュームなんて…」と、あまりたいした機能ではないように思われるかもしれません。
しかし、実際にイヤホンを使っていて一番ストレスを感じるのは、個人的には音量調整。
アプリのボリュームコントロールがないと、イヤホン本体やスマホでドンピシャの音量に調整できることはほぼありません。
どうしても小さい音より1段階大きな音で再生しがちなので、耳にも良くないんですよね。
そういった意味では、92段階ものボリュームコントロールができるというのは、実際に使ってみると非常に大きなメリットに感じるはずです。
Victor HA-FX150Tの機能
ビクター HA-FX150Tに関して、アプリ以外の機能について確認していきましょう。
タッチコントロールについて
HA-FX150Tは、イヤホン本体で様々な操作ができるようになっています。
操作方法は以下の通りで、慣れるまでちょっと複雑に感じるのが難点だと思いますね。
| 動作 | 左 | 右 | |
|---|---|---|---|
| 音楽 | 1回押し | 音楽再生/停止 | 外音取り込み ON/OFF |
| 2回押し | ボリュームダウン | 次の曲にスキップ | |
| 3回押し | ボリュームアップ | 前の曲に戻る | |
| 4回押し | 音声アシスタント起動 | - | |
| 1秒長押し | サウンドモード切替 | ノイズキャンセリング ON/OFF | |
| 動画 | 5回押し | 低遅延モード ON/OFF | - |
| 通話 | 1回押し | 着信中:受話 通話中:マイクミュート | - |
| 長押し | 通話中:切断 着信中:着信拒否 | - | |
| 5回押し | イヤホン ⇒ スマホへの通話切替 | - | |
左側のイヤホンでは、2回目・3回目のタップを長押しすると、ボリュームを連続して調整可能。
サウンドモードの切り替えは、FLAT⇒BASS⇒CLEAR⇒Professional①⇒同②⇒同③の6ステップ。
サウンドモードの切り替えは、アプリで直接選択したほうが楽に感じました。
考えられる操作を全て詰め込んだ結果「覚えられるのか?」という状態になってしまったかなと…。
全部使いこなすのはかなり時間がかかりそうなので、タッチコントロールのカスタマイズはアップデートで追加して欲しいですね。
雨や水しぶきに強い防滴性能
HA-FX150TはIPX4の防滴性能となっています。
IPX4というのは「いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない」というレベル。
したがって、雨の日に外出先で使用を控える必要はありませんし、急に雨に降られて多少濡れた程度なら大丈夫です。
また、軽く汗をかく程度なら問題ないので、ジムなどで音楽を聴きながらワークアウトを楽しむことも可能です。
イヤホン本体はIPX4ですが、充電ケースは防滴仕様ではないので注意が必要です。イヤホンが濡れた場合は、十分に水分をふき取るか、乾かしてからケースに戻すようにしましょう。
Victor HA-FX150Tのレビューまとめ
それでは最後にビクター HA-FX150Tの総合評価と、レビューして感じたことをを整理してみましょう。
| 評価項目 | Impression | Score |
| 通話品質 | 静かな場所での通話は問題なし | 4.2 |
| 低音 | 暖かくもうねるような上質さ | 4.8 |
| 中音 | ボーカルの距離感が絶妙 | 4.8 |
| 高音 | 大人しめだが伸びやかで美しい | 4.6 |
| ANC性能 | 低域~中低域はしっかり消去 | 4.2 |
| 外音取込み | 標準レベルの声質 | 4.0 |
| アプリ機能 | 必要最低限の機能は搭載 | 4.1 |
| 機能加点 | 92段階のボリュームステップ | 5.0 |
| 総合評価 | 4.5 | |
ビクター HA-FX150Tはを実際に使ってみて感じたことは、とにかく音質の満足度は非常に高いということ。
さすがは「Tuned by VICTOR STUDIO」だけのことはあり、2万円オーバーのイヤホンだと言われても納得してしまう音質です。
アクティブノイズキャンセリングも強すぎず弱すぎずで、純粋に音楽を楽しみたいなら非常におすすめの1台だと思います。
これでLDACとマルチポイントに対応していてこの価格だったら、爆売れ必至間違いなしだったんですが…。
他のメーカーはLDACとマルチポイントへの対応モデルを増やしつつあり、HA-FX150Tの最大の残念ポイントはここにあると感じています。
ただし、日常的にイヤホンを2台のデバイスにつなぐことはない方であれば、LDAC未対応なのはあまり気にしなくて良いかもしれません。
LDAC対応だったらさらに良い音だったんだろうなというのが残念なだけで、AAC接続でも十分な音質ですからね。
ビクターの音づくりの技術が詰まったHA-FX150Tは、音楽好きなユーザーにはぜひ手に取って頂きたい1台です。
















